第14話 五目並べとはさみ将棋(2)

 2日後、再びお昼ご飯の際に4人は集まり、仕上がった玩具を取り出した。

 


「じゃぁ、遊び方を説明するね。」



 3人に「五目並べ」と「はさみ将棋」の遊び方を説明した。エリーもミクもリリーも大ハマリ。おかげで、午後の授業に全員で遅刻して、先生から叱られた。そして、その日の夜、仕上がった玩具を持ってお父様の部屋を訪ねた。



「お父様よろしいでしょうか?以前約束した物を1つ作ってみました。」



 お父様に披露する。マス目の書かれた部厚い板、きれいに形が整えられ、黒と白に塗られたたくさんの石、遊び方の説明が書かれた紙を見せた。



「レイ、これはどうやって使うのだ。」


「ちょっと待っていてください。お母様とお兄様とお姉様をお呼びしますね。」



 僕は、それぞれの部屋に呼びに行った。全員が居間に集まって、仕上がった玩具を見ている。


 いつものようにお姉様は僕の頭をなでてくる。



「これ、レイが考えたの?すごいね。やっぱりレイは天才だわ。」



 ここで遊び方を説明すると、はさみ将棋の家族大会が始まってしまった。



「レイ、もう1回だ。」



 お兄様がむきになっている。



「無理よ。レイは天才だもの、勝てるわけないわ。」



 お姉様が火に油を注いでいる。


 そして、お父様が真剣な顔をして


 

「わかったよ。レイ。公爵家が取引をしている商人を紹介しよう。この国で1番大きな商会だ。安心していいぞ。」

 

「ありがとうございます。お父様。」



 その日、レイはぐっすりと眠れるのであった。


 その週の休日の日、エリーとミクとリリーが家に来た。執事のセバスに案内されて、3人が居間に入ってきた。居間にはお父様とお母様と僕がいる。


 お父様がエリーを見つけていきなり挨拶を始めた。



「お久しぶりです。エリーヌ王女様。」


「叔父様、叔母様。私は、レイ君のクラスメイトですから、エリーと呼んでください。」


「わかりましたわ。エリーさん。そちらの方も紹介して、レイ。」


「同じクラスの友達で、ミクとリリーだよ。」


「はじめまして。公爵様、お母様、私は獣人族のミクにゃ。レイ君には、学校で仲良くしてもらってるにゃ。」

 


 ミクは何か意味深な挨拶をしている。



“お母様?とかいったよな~?”


 

 「は、は、はじめましちぇ、わ、わ、私はリリーでしゅ。魔族ですが、お願いしましゅ。」

 


 リリーは緊張のあまり、噛みまくっている。



「こちらこそ、レイがいつもお世話になっていてありがとうね。ミクちゃん。リリーちゃん。」

 


 お母様はニコニコ顔だ。まるで自分の娘が増えたような喜び方だ。


 屋敷のメイド達がみんなの飲み物を用意してくれた。3人娘は、お父様やお母様と楽しそうに話をしている。どうやら、僕の学校での様子を聞いているようだ。さすがに、親として子どものことが気になるのだろう。


 しばらくして、執事のセバスがやってきた。



「旦那様、ロラックス商会のロラックス様がお見えですが、どうしますか?」


「ここに通してくれ。」



 近づいてくる足音のほうを向くと、中肉中背でいかにも商売人という感じの紳士が来た。



「お久しぶりです。公爵様、奥様。」


「急な呼び出しですまないな。そこに座ってくれ。」


「では、失礼します。」


「今日来てもらったのはほかでもない。うちの次男のレイとその友人がな、商売をするのに信頼のおける商人を紹介して欲しいというもんだから、そなたに来てもらったんだが。」


「公爵様にそう言っていただけるのは大変光栄ですが、商売ですか?」

 


 ロラックスさんは人物を確認するように、僕たちを見てきたので、すかさず挨拶をした。



「ご挨拶が遅れました。公爵家次男のレイチェルです。隣から、エリーヌ、ミク、リリーです。」



 エリーの名前を聞いた瞬間、ロラックスさんの顔色が変わった。



「エリーヌ・・・・・もしかして第3王女のエリーヌ様ですか?」


「はい。でも今はレイ君の学友のエリーヌですから、気にしないでください。」

 

「わかりました。王女様がそうおっしゃるのであれば。」



 挨拶が一通り終わったので、僕が話し始めた。



「僕たちは、この国にないような珍しい玩具や料理、簡単で便利な機械なんかを考えて、それを販売したいと思っています。少しでもこの国の人達の役に立ちたいのです。」

 

「その考えは立派ですが、まだ初等部の生徒たちが、本当にできるのですか?」

 

「できることからやりたいのです。一歩ずつ進めていきたいと思っています。」

 

「何か試作品のようなものはないのですか?」

 

「先日、試しに玩具を1つ作ってみました。これですが。」



 そう言って、ロラックスさんの前にマス目の書かれた部厚い板を出した。そしてきれいに形が整えられた黒と白の石。遊び方の説明が書かれた紙も取り出して見せた。ロラックスさんは、不思議そうな顔をしている。

 


「これは、何ですか?装飾品には見えませんが。」


「これは、玩具です。恐らく、この国にはないものですね。」


「どのように使うのでしょうか?」


「では、実際にやってみましょう。」



 僕は遊び方の説明をして、実際にロラックスさんと対戦してみた。



「これは楽しい。これは流行りますよ。是非、これを私の店で扱わせてください。」


「いいですよ。ただ、条件がいくつかあります。」


「どんな条件ですか?」


「僕たちは、いろんな商品の『開発』を中心に行っていきたいのです。だから、試作品以外は、そちらで制作して欲しいのです。」


「つまり、レイチェル様たちは、いろいろな商品を考え、その権利を売りたいということでしょうか?」


「その通りです。だから、信頼のおける人を、お父様に紹介していただいたのです。」


「なるほど。わかりました。安心してください。レイチェル様たちは学生ですから、商品の制作と販売はロラックス商会で行います。」


「良かったです。ところで、ロラックスさんは商業ギルドの会員ですよね?」


「はい。そうですが。」


「商業ギルドには、特許とかはないのですか?」


「特許とはどういうものですか?」


「特許というのは、商品のアイデアを考え、登録します。その商品と同じものを作って売ろうとすると、先に登録していた人に権利金を支払わなければいけません。そんな仕組みです。そうしないと、マネされてしまいますからね。」


「なるほど、そのとおりですね。良いことを聞きました。早速、商業ギルドでその『特許』を取り入れることにしましょう。レイチェル様は博識ですね。」


「ところで、商品の権利金というのは、普通どのくらいになるのですか?」


「そうですね。商品の売値の1割程度ですが、レイチェル様達には、期待料を込めて2割ではいかがでしょうか?」



 レイは、エリーとミクとリリーとひそひそと相談するのであった。



「いいですよ。では、その条件でお願いします。」


「承知しました。これからも皆さんのことを期待していますよ。」



 ロラックスさんは立ち上がり、レイ、エリー、ミク、リリーの順に皆と握手した。


 そしてその場が解散となり、皆が帰宅した後、レイは自分の部屋でベッドに寝転んでこれからのことを考えていた。すると、ローザお姉様が部屋に入ってきた。



「イリナに聞いたわよ。レイ、今日、可愛い女の子達が家に来たんだって。しかも3人も。」


 なんか、頬を膨らませて怒っている。


「クラスメイトだよ。」


「なんか、全員可愛かったって、イリナが言っていたわよ。」


「そうかなぁ。ローザお姉様が一番かわいいと思うけどな。」



 するとローザお姉様がベッドに上って来て、僕の頭を抱きしめて喜んだ。



「さすがレイだね。よくわかっているじゃない。」



“どうせ抱きしめられるならイリナの方がよかったな~。絶壁は痛いよ。”

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