第9話 冒険者ギルドへの報告

 シリウス先生は元気がなく、悲しい目をして話しかけてきた。 



「冒険者ギルドに立ち寄って、報告したいけどいいかな?」


「大丈夫ですよ。今日は、最終試験で遅くなると、お父様にもお母様にも伝えてありますから。」



 ベガ先生がふざけて言っている。



「あまり遅くなると、レイ君のことを大好きなお姉ちゃんが怒るかもよ。」

 


 3人が冒険者ギルドに入ると、受付の女性から声がかかった。



「こんにちは。シリウスさん、ベガさん。そちらの子どもは?」


「オレたちが家庭教師をしている、公爵家次男のレイ君だよ。」


「えっ———— !大変失礼しました!」


「初めまして。レイチェル=リストンといいます。気にしないでください。僕のことは、先生達のようにレイと呼んでください。」



 受付の猫耳をしたお姉さんは、僕を見て固まっていた。


 

「どうかしました?僕の顔に何かついていますか?」と焦っていると、


「かわいい!天使だ。本当に天使っていたんだ。」と自分の世界に入り始めた。


「僕は人間ですよ。天使ではありません。」



 笑って答えると、隣にいたベガ先生が気になることを言い始めた。



「マリー、この子はだめよ。この子には怖いお姉ちゃんがいるから、この子に何かしたらどうなっても知らないよ。」


「えへへ、そうなんですか。残念。お持ち帰りしたかったのに。あらためまして、私はマリーです。レイ君、よろしくね。」


「ところで、マリー。ギルマスいるかな?大事な話があるんだが。」



 シリウス先生が真面目な顔で聞いた。



「いますよ。2階のギルドマスター室です。どうぞ。」

 


 僕たち3人は、マリーさんの後をついてギルドマスターの部屋に向かった。



「ヨッ!シリウスにベガじゃねぇか。どうしたんだ?」


「ちょっと大事な話があってな。あっ、そうだ先に紹介しよう。こっちいるのが公爵家次男のレイだ。俺達が、頼まれて家庭教師をしているんだ。」


「初めまして。公爵家次男のレイチェル=リストンです。レイと呼んでください。」

 

「ああ、君が公爵家のねえ。君のお父上には、いつもお世話になっているよ。この大陸のギルドは、このステイル本部がすべてを管理しているんだ。そして、私は、ここのギルドマスターをしているアルタだ。よろしくな。」


「アルタさんは偉い人なんですね。」


「照れるじゃねぇか。別に偉いわけじゃねぇけどな。」



 するとシリウス先生が教えてくれた。



「アルタさんは元S級の冒険者だからな。偉いだけじゃなくて、強いんだぞ。」


「よせやい。おだてたってなにも出ねぇぜ。それより大事な話があるんだろ。」



 シリウス先生は、今日、東の森であったことを、ギルマスのアルタさんに詳細に説明した。僕については、くれぐれも他言無用ということを納得させて。



「ってことは、今日、そこのレイの卒業試験で森にいったら、ゴブリンの群れがいて、それをレイが一人で討伐して、犠牲者の遺品を持って帰ってきたということか?」


「そうだ。」


「まだ初等部にも入学していないこの子が、ゴブリンの集落をねぇ、一人でねぇ・・・」


「信じられなくてもいい。そのうちお前にもわかるさ。」


「じゃあ、下の倉庫に持ってきたものを出してもらおうか?」


「わかりました。」レイは緊張気味に答えた。



 そして、僕たち4人は建物の裏にある倉庫に向かった。



「シリウス、どこに持ってきているんだ?」


「ここだけの秘密にして欲しいんだが、いいか?」


「わかったよ。何があってもしゃべらんよ。」


「レイ、出してくれるか?」



 そう言われてレイは空間魔法でしまっていたゴブリン達の死体、洞窟内にあった犠牲者の遺品をすべて出した。



「どっから出したんだ?それに、ゴブリンキングがいるじゃねぇか。」とギルマスが驚いている。


「レイ君は、私が使う魔法はみんな使えるのよ。多分それ以外もだけど・・・」


「待て!ゴブリンキングは魔法じゃなく、剣で切られているぞ!」

 

「レイは、下手すりゃ、剣の実力も俺以上だな。」

 


ギルマスがにらんでくる。



「レイ、君は何者なんだ?」

 

「僕は、普通の人間です。シリウス先生とベガ先生が、丁寧にいろいろと教えてくれたので。」


「レイ君って本当にいい子ね。」



 ニコニコ笑いながらベガ先生が抱き着いてきた。僕は頭の後ろにあたる柔らかな心地に幸せを感じていた。


 今更だけど、ベガ先生は美人で巨乳で、最高だ。

「わかった。報酬はどうすればいい?レイはまだギルドの会員じゃないから、シリウスに預けていいのか?」


「アルタさん、シリウスに預けたらみんな飲んじゃう。私が預かります。私が預かって、公爵様にお届けします。」


「そりゃないよ。俺は全然信用されていないんだ。なんかショックだ~。」


「大丈夫ですよ。シリウス先生、そのうち、ベガ先生もシリウス先生の良さに気付いてくれますよ。」


「何を2人でこそこそしているの?用事が終わったから帰るわよ。レイ君を家まで送っていかないとね。」


「僕1人で帰れますよ。」


「だめよ。レイ君に何かあったら、私がレイ君のお姉ちゃんに怒られるもの。」


「はい、はい、わかりました。ではよろしくお願いします。」

 


 3人は冒険者ギルドを後にして公爵家に向かった。



“ベガ先生と手をつなげるのもこれが最後かな~。なんか悲しいな~。でも、そろそろ学園へ入学なんだよな~。どんな友達ができるのかな~。楽しみだな~。でも、試験があるんだよな~。面倒だ~。”

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