第3話 教会での出来事

 教会に到着した後、僕は執事のセバスに馬車から降ろしてもらい、お父様とお母様と一緒に教会の中に入った。建物の中は、天井と壁一面に、鮮やかな色で神々の絵が描かれていて、その豪華絢爛さに目を奪われた。



“凄いな~。金ぴかだ!”



 また、一般の参拝者も多くいたが、白色の服を着て、ローブを頭からかぶった人達もいた。彼らは、一般の人々を誘導し、長い列に並ばせていた。


 

「お母様が言ったとおり、建物の中もすごく立派ですね。」


「そうでしょ。今からおよそ300年前に、この国が建国されたときに作られたのよ。」


「そんなに歴史があるのですか?ところで、あの白い服を着た人たちは誰ですか?」

 

「彼らは、この教会で働いているんだよ。この教会には、他に大司教様や司教様がいるんだよ。」


「そうなのですね。お父様、向こうで並んでいるあの方たちは、何をしているのですか?」

 

「まぁ、まぁ、レイは質問ばかりね。」とお母様が笑っていた。


「彼らは、怪我や病気を治してもらうために並んでいるんだよ。」


「どうやって怪我や病気を治すのですか?」


「教会には、聖魔法を使える人が働いているからね。」


「すごいですね。治すところを見てみたいな。」


「今度、時間のある時に見せていただこう。」



 話しながら奥に進むと、前方から艶やかな赤い服を着た老人が歩いてきた。



「これは、これは、公爵様、お待ちしておりました。」


「大司教様、今日はよろしくお願いします。レイもご挨拶をしなさい。」


「はい。大司教様、はじめまして。公爵家次男レイチェル=リストンといいます。今日はよろしくお願いします。」


「ご丁寧に。私は、このステイル聖教会の大司教をしていますヨハネ=シルバルといいます。こちらこそよろしくお願いします。では、皆さんこちらにお越しください。」


 

 レイたち3人は、奥の『祈りの間』に通された。そこには、5つの石像が祭られていたが、あまりの大きさと美しさに、声が出ないほど驚いてしまった。不思議と、真ん中の石像には懐かしさを感じた。



「大司教様、お聞きしてもよろしいですか?」


「どうぞレイチェル様。」


「これから5歳になったことを神様に報告し、感謝したいのです。恥ずかしいのですが、石像がどなたかわかりません。教えていただけないでしょうか?」


「レイチェル様は正直ですね。わかりました。では最初に、真ん中に祭られているのが最高神ソフィア様です。その左側に生命神ライフ様、魔法神マジク様。そしてソフィア様の右側に農業神アグリ様、武神ヘラク様です。御覧のとおり、ソフィア様、ライフ様、マジク様は女神様です。」


「ありがとうございます。たくさんの神様達に守っていただいているのですね。」


「そうですね。ここに祭られている神様達は、上級神と呼ばれる方々で、それ以外にも中級神、自然神と呼ばれる神様達もいるのですよ。」

 

「そうなのですか。勉強になります。ありがとうございます。」

 

「では、そろそろ参拝していただきましょうか。公爵様と奥様は、こちらでしばらくお待ちください。レイチェル様はこちらへ。」



 レイは、お父様とお母様から離れて、5大神の中心に位置するソフィア様の石像の前に来た。そこには、祭壇があった。そこで、僕は、事前に大司教様に教えていただいた通り、片膝をつき、目をつぶろうとした。次の瞬間、5大神の石像が激しく光った。そして僕は意識を失った。

 

 目を開けると、そこは花が咲き乱れる草原で、なぜか懐かしさを感じた。



「お帰りなさい。ガイア。いや、今はレイチェルね。」



 声のする方を見ると、そこには眩しく光る物体がいた。慌てて跪き、挨拶をする。



「はじめまして。レイチェル=リストンと申します。」


「顔を上げなさい。お話をする前に、先に封印をときましょうね。」



その直後、光がさらに強くなり、レイの体は暖かい光に包まれた。徐々に記憶が戻り、懐かしい女性が目の前にいた。



「お久しぶりです。母上。」


「思い出したのね。」


「はい。レイチェルとしての記憶も、過去の記憶も、すべて思い出しました。」


「では、約束通り能力の封印も解除するわね。」


「少しお待ちください。母上。はじめから神の力を使えてしまっては、今度の生を十分に楽しむことができません。ですから、私は努力して肉体を成長させ、少しずつ力の解放を行いたいのです。」


「でもこの世界には、強い魔物も邪悪な魔王もいるわよ。大丈夫かしら?」


「大丈夫です。ある程度必要な力は残します。それに、努力して成長すれば封印が解けるように、自分で封印しますから。」


「わかったわ。」


「ありがとうございます。ところで、母上の管理するこの世界には、災害を起こす魔物や邪悪な魔王がいるのですか?」


「そうね。人々が喜怒哀楽の中で、悲しみや苦しみを体験し、魂の成長を促すためには、必要な存在ですね。」


「この世界に必要な存在を、私が成敗してしまってもよいのでしょうか?」


「以前言った通り、今回はご褒美よ。あなたの好きなように生きなさい。それに、神界にいる神々は下界に直接介入できないのよ。だから、予想以上に強くなってしまった魔物や魔王を、あなたが成敗してくれるのは助かるわ。この世界を平和にしてくれることは、私達にとってもありがたいわね。」


「わかりました。」


「そろそろ時間ね。たまには、連絡をよこすのですよ。では、楽しんで来てね。」


 

 そうして、レイは元の世界に戻るのであった。

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