第8話 里の暮らし

猫さん達がすんでる獣人の里には、猫以外にもライオンだったりトラだったりとネコ科が勢ぞろいしていた。


「ライオンのお兄ちゃん、これは食べれる?」


私は真っ赤な木苺の実を指さす。

今日は里の人達と森の周辺で木の実などを探していた。

私やドライアドの為に。


みけ太は狩り班らしく姿は見当たらない。

ただ、遠い森の奥の方で木が倒れてる音が響いてくるようで里の皆の耳がぴくぴくと反応していた。


可愛い......。


エルとうー姉は村長さんとお話し合いをしていた。

この里で暫く過ごすんだって。


私の体が元気になったら、みけ太が外の世界を見せてくれる約束だ。


みけ太と一緒に居たいから、直ぐに私も冒険者になるって言ったら皆が首を横に振って止めるんだもん。

確かに体力も筋力もないし1日の行動は皆よりも時間がかかる。


「チハルちゃん、そろそろ戻ろう。狩りもすんだようだ」


のそっと大きなライオンのお兄ちゃんが私を軽々と抱き上げ肩車をしてくれた。

目線がみけ太よりも高く歩くたびに風が心地よくふく。


里の広場に戻れば、みけ太と数人の猫さん達がお肉を切り分けていた。

猫さん達も人型なだけあって身長はあるはずなのだがさらにそれよりも大きな獲物だった。


私はそれを見て怖いという感情が湧かなかった。

そっと自分の心臓に触れる。

ハルにとって狩りは日常の事だったのかもしれない。


私にとっては非日常なはずなのに、生きる為の本能なのだろうか。


「ん! チハルだ!おかえりチハル!」


ぱっとこちらを振り向いたみけ太は、作業を中断しライオンのお兄ちゃんに駆け寄る。


「レウ、チハルの事みててくれてありがとうな!」

「なに......妹が出来たようで一緒に居て楽しかったよ」


わしりと大きな肉球が頭を撫でてくれる。

みけ太より大きくて私の頭はすっぽりと覆われた。


ライオンのレウお兄ちゃんは摘んできた気の実なんかを里のお母さんやお姉さん達に渡していた。

ごはん担当は料理が好きな人たちが引き受けているようだ。


みけ太、エル、うー姉をまっている間、椅子らしきものに座りぶらぶらと足を揺らし待っている。

そんな私を見かける度に里の人は声をかけてくれた。


「チハルちゃん、味見していって」

「チハルちゃん寒くはない?」


優しい人たちが私の心配をしてくれる。

それだけでも私は幸せな気持ちでいっぱいになった。

手を振り返したり頷いたり、口をもぐもぐしたり忙しなさはあるもののお陰で寂しさを感じることがなかった。


「チハル!お待たせ、ひとりにしてごめんな!」


みけ太が駆け寄ってくると私を抱きしめてくれ、ざらり、ざらりと私の頬を舐める。

痛いけど、小さい頃から嬉しい事があった時のみけ太の癖だ。


「みけ太おかえり、おつかれさま。大丈夫だよ」


みけ太の人より高い体温を全身で感じ毛並みに手を滑らせる。

みけ猫の雄は希少でこの世界でも同じなんだとか。


だからといって、捕まって奴隷にされたりという事はないらしい。

みけ太を捕まえれば国が敵になるんだとか。

私はその話を聞いてもいまいちピンとこなかった。


みけ太って凄いんだということしか分からない。

それでもみけ太は昔と変わらない。

やんちゃで、猫なのに人懐っこくて甘え上手なのだ。


昔と変わったのは容姿や言葉が話せる事くらいだろう。

大好きなのは昔と今も変わらない。


「みけ太、今日はみけ太が好きなお肉なの?」

「そうだぞー! チハルには細かくミンチにしたお肉出してもらうからな!」

「うん、みけ太が好きなお肉ならきっと美味しいね!」


きゃっきゃっと笑いつつも、私はいつの間にか眠りについていた。

木の実など採って、お喋りして体力を消耗したようだった。

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みけ猫みけ太は異世界のお師匠である もちる @usa84

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