第11話 トーナメント

 2次試験は全受験者による模擬戦のトーナメント。しかし2次試験とは名ばかりで2次試験受験者はほぼ全員合格。1次試験が実質的な入学試験で、2次試験はクラス分けの判断材料としてしか機能していないそうだ。


「不幸にも1次試験のせいでお前は注目を集めている。下手に目立たないほうがいい。」

 あまり目立つと人間であるのがバレてしまうかもしれないからな。それにしてもルチアもめちゃくちゃなことを言ってくれるな。ちょうどいいレベルまで手を抜くってどうやってやるんだよ。


「でも仮にもルージュの護衛として入学するなら同じクラスにならないといけないんじゃないか?どのレベルまで調整すればいいんだ?」


「それは問題ない。そもそもお前はルージュと同じクラスになるのは不可能だからだ。」

 万事解決、といった顔をしている。いやそれはおかしくないか?


「しかたないだろう、推薦組と非推薦組で1年のクラスは別になっているんだ。2年からは非推薦組も成績優秀者は上位クラスになるからそこからだな。」

 それなら俺がこの学園を受験した意味はあったのか?


「そういうことだから、まぁ頑張らない程度に頑張ってくれ。私は仕事に戻るよ。」







「あれ?ルチアは?」

 喧嘩が一段落したのかテレシアとジュドーが近寄ってくる。


「お姉ちゃんは……仕事に戻る……って……。」


「そっかー、もっと話したいことあったんだけどなー。」

 テレシアが残念そうな顔をする。


「試験官やってるしまたすぐ会えるんじゃないか?」


「それもそうね。私たちもそろそろ自分たちの番が来るのを待ってたほうがいいかもね。」

 受験者登録は終わったが当然これで試験が終わったわけではない。2次試験のトーナメント表が貼りだされている広場に向かう。





 1次試験通過者100名と推薦組の100名、計200名でのトーナメント。2、3回勝つくらいが平均的か。トーナメント表を眺めながらどこまで手を抜くかを考えておく。と、そのトーナメントのおかしさに気づく。


「妖魔族からの推薦はお前たち3人だけだよな?」

 隣にいるテレシアに声をかける。


「ええそうよ。私たちは優秀なのでね。」


「で、なんで推薦組が100人もいるんだ?6種族しかないはずだろ?」


「それは妖魔族が劣った種族だからに決まっているだろ。」

 長身の男が俺のことを見下ろしながら言う。耳が長いなエルフか?集団でトーナメント表を確認しに来ているようだった。


「魔力は血統に依存するからな。おまえらは生まれながらに貧乏くじを引かされてるんだよ。」


「あれ?でもルチアって確か首席でこの学園を卒業してるんだよな?」

 ここに来る前にそんな会話をした気がする。魔王候補を自称してそこそこ自慢されたような。


「妖魔族で戦えるのはあの人くらいなもんだろ。それに俺らの族長のほうがよっぽど強いしな。」


「いや、族長だけじゃなくグレン様ももうあんなオワコンより強いんじゃないか?」

 エルフたちが盛大にルチアの悪口大会を開いている。人間の世界は職業差別が激しかったけど、魔族界ではそれが種族差別に代わってるのかな。


「お姉ちゃんは……弱くないもん!!!! 」

 ルージュが突発的に大声を出す。それに対してエルフたちも不快感を隠そうとしない。

 野次馬感覚の人が少しずつ集まってくる。まずいな。問題は起こしたくないんだけどな。

ルージュをなだめつつエルフたちのご機嫌も取ろうとする。何やってんだろ、俺。


「おい、お前たち何をしている。」

 野次馬の囲みの外から声がかかる。


「いえ、この妖魔族が喧嘩を売ってきて……」


「私は『トーナメント表を確認』するようにいったはずだ。もう一度聞こう、何をしている?」


 エルフ族たちがその言葉を聞いてその場から離れる。向かった先は声の主だ。ほかのエルフ族より頭一つ高い背丈をしている。ただ男で白髪のロン毛はセンスを疑うけどな。

 結局それでこの件は終息した。




 いまだに怒りの収まらないルージュの相手をしつつも俺の試合の順番が迫っていた。学園内に複数箇所ある訓練場を使って多数の試合を同時進行していくシステムらしい。

 ルージュの相手をテレシアに任せて指示された訓練場Bに向かう。しかし、なぜかそこでは多くの観客が俺を待っていた。




















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