第923話 市場の風景
言葉の比喩的表現の違いというのは、イメージの相違に直結するので若干の混乱を生じてしまった。
きっと自動翻訳さん的な意味合いとしては『
直訳でなく『皇国だったらこう書くよね?』っていう予測変換までできるようになるとは、AI以上じゃないですか自動翻訳さん!
お陰で俺は、クルクルしちゃったんですけどねっ!
ちゃんと全体を見て、最終的にどの意味で捉える単語を当て嵌めるかを決めないといかん。
こうして見ると、タルフ語は若干の皇国語が混ざっているみたいですな。
それも、結構古い時代ではあるけど、古代語から現代語に移行するタイミング辺りっぽいよねー。
そしてちょっと冷静になったところで、ガイエスが撮影機を何度か使ったことが解った。
ヘストレスティアに行ってるみたいだから、珍しいものでもあったのかな?
録画されたものをセットしてみてみると……あれ、これ皇国内?
市場みたいだけど……あ、生姜の飴……ってことは、ここってカルラスか!
おおー、これはいいなーー!
どうやらヘッドタイプのウェアラブルカメラを使ってくれているみたいだな。
これはいいリハーサルになるんじゃないか?
成婚祭で使うカメラの、撮影される感じを想定できる。
ガイエスは身長が高いから、結構見渡せるな。
あっ!
そーか、カルラスにもあったのか。
デートリルスとカルラスからのものは、アリスタニアさんが取りまとめてくれているんだよな。
今度、酢橘も頼んでみよう。
それとも、オルツにもあったかなぁ?
今の時期だと、もうシュリィイーレの市場には柑橘類が何も入ってこないんだよねぇ。
おおおー、
こっちでは『
焼き秋刀魚とか、食べたいなーー。
今度のセラフィラント便に、秋刀魚が載ってくるかな?
ロカエって捕れたっけ?
うちでは、ロカエ以外の港で水揚げした魚は使えないから、届くといいなー。
ガイエスのやつ、楽しんで歩いてるなぁ。
うーむ……ガイエスが今使っているカメラも画角は狭くはないんだが、やっぱり全方位となると
後ろ向きにもカメラをつけたいんだけど、そうなるとガイエスに随分負担になるんだよな。
自然放出魔力をある程度あてにしているから、後頭部だとそれが使えない。
だから、なるべく額から離したくないんだよな。
全部の放出魔力を利用するには、胸元が一番負担がなく、その次が手の平、そして額。
自然放出魔力は、前に向かう方が多い。
後ろ側や背中だと、方陣くらいしかまともには使えない。
そもそも、人が魔法を使う時は『見える範囲と方向』に、効果を発するように放つだからだろう。
だから、大概の魔法は『使用者の前面』で展開されて効果を発揮する。
方陣と付与魔法だけなんだよね、それに左右されないのは。
だけどねー……方陣ならまだしも、常時発動魔法の付与だと魔力供給が大変なんだよねー。
ガイエスにそこまでの無理をさせたら、半日もせずに倒れそうだよ。
カメラは、全部が黄魔法の重ねがけだしガイエスがあまり得意ではない『空系』の魔法になるからな。
胸元のカメラでさえあれほどの魔力と魔石を使っているんだから、後頭部までは……難しいんだよ。
だから、前方にありながら全方位となると……うん、やっぱりドーム状にして、おでこから頭の上にかかる感じの『複眼タイプ』だろうか。
ガイエスが撮った市場の風景を見つつ、そんなことを考えていた。
すると、なんだか……ガイエスが見ているという訳ではないけど、ちらりちらりと見切れる人影がある。
ちょっと、拡大してみよっかな……
まるでガイエスを見ているようではあるのだが、二、三人で話しながら、ガイエスとすれ違っては……ちらり、と視線を送っている。
市場の品々に夢中なのか、ガイエスは全く気付いていない。
彼らはガイエスの顔を確かめようとしているのか?
いや……瞳の色か?
真っ正面から目を見ることはないようだけど、同じ人が顔のはっきりと見える位置まで来て、何度もすれ違ったりしている。
こいつら、あの詐欺グループ?
セラフィラント内にいるから、きっとあいつは今『正しい身分証』を提げているはずだ。
となると……瞳の色のカラーチェンジ錯視は働いていないんじゃないかな。
冒険者っぽいと踏んで近寄ったか、それとも……ガイエスがよく絡まれる『赤い瞳を目印にしている』やつらか……
うん、こいつらの映像をプリントアウトして、ビィクティアムさんに届けた方がいいな。
ガイエスが狙われているという可能性もあるが、ガイエスを『ガウムエス』だと思って確認しているという可能性も捨てきれないからね。
んーと……ちょっと時間が遅いから……明日の朝イチ、だなっ!
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