第894話 洞窟探検へ行こう!
「おまえさ……本当にいいのかよ?」
「んー、ばれれば怒られそう?」
あ、呆れられた。
まぁ、まぁ、怒られるとしたら俺だけだからさ。
昨日、ガイエスと一緒に探検に行こうと約束し、南門から『森に行きまーす』と元気よく出発。
ちゃんと南の森まで行ってから……白森の『元角狼の巣』の入口に『門』を繋いだ。
ガイエスは見ただけで魔獣の巣穴だったところじゃないのか、なんて聞いてきてさ。
いやー、さーすが冒険者さんだねぇ。
「すっかり浄化済だから、新しく魔虫も魔獣も棲み着いていないし洞窟探検だよ」
「それで『怒られそう』なのかよ?」
「一応……まだこの辺りは警戒地区になっていると思うからねー」
だから態々南の森に入ってから、方陣を使って移動したのだ。
南門を出てからすぐだと怪しまれるし、目標鋼の置いてある改装した狩猟小屋に行ったなんて言い訳もできないからね。
あの小屋に『移動の方陣』で入ると、衛兵隊にばれちゃうんだよねー。
「閃光仗は持っているし、念のため『錯視の方陣』も描いてあるし、ガッツリ浄化しつつ進むから」
「……解ったよ。だけど、足元は気を付けろよ? 洞窟の中なんて歩き慣れていないんだろ?」
「おうっ!」
滑って転んだりしないように、ちょこっと浮きながら行くつもりですよ。
俺がこけたら、迷惑被るのはガイエスだろうからね。
入口は広くて高さも充分だったのだが、緩やかに下へと進んで行くと徐々に狭くなっていく。
ガイエスが前を歩くと言ってきかないので、俺は後ろを付いていった。
岩壁には粘菌くんはいないようだし、黴とか茸類も見当たらない。
洞窟の割に乾いた感じだなーと歩いていたら、ガイエスが立ち止まったのでぶつかりそうになった。
「分岐がある。どちらも入れそうだが……」
「そうだなー……」
神星眼スコープでは、分岐の右側は上り坂なので、別の所に出そうだ。
取り敢えず太い方の道へ行って、奥まで見てみようというとガイエスは頷いてまた歩き始める。
こういう細長い回廊状の洞窟だと『採光の方陣』はイマイチなんだなー。
ガイエスは、ヘッドライトと殲滅光の光で辺りを照らしつつ進む。
それからもふたつほど細い分岐があったが、マーキングだけしてメインを進んで行く。
段々とまた回廊は細くなったが、不意に、広い場所へと出た。
透かさず『採光の方陣』で隅々まで明るくするガイエス。
手慣れていらっしゃる……おおおおっ!
「……泉、か?」
「そうだね。真水みたいだ。殲滅光差し込んだら底まで見えるかな?」
「おまえの方が、剣身の光が長いな」
「あ、俺、自分の雷光系の魔法を乗っけているからだよ。元々の基本が【雷光魔法】だから、重ねがけで光の増幅ができるんだよ。お、そんなに深くはないけど、足はつかないなぁ」
「でも底の方に魔力があるみたいだが……これは、取れないな」
流石だな、方陣なのに水底の鑑定ができるとは。
水が入り込んでいるルートは……あ、下の方の壁に亀裂があるなー。
どばどば入って来ているって感じじゃなくて、染み出してていつの間にか溜まったって感じだ。
この水をどけても、すぐに満杯になったりはしそうもないな。
「よし、この水出しちゃおうか」
「はっ? これ、かなりの量だぞ?」
「全部じゃなくても、半分くらい出せたら中に立てそうだから」
まぁまぁ、任せてくださいよ。
この場所は広いから、ちょっと荒っぽいやり方だけど大丈夫だと思うよ。
いえね、水撃ポンプとか作ってもいいんだけどさ、流石にガイエスの目の前で『今ここにない素材を加工』して管を作るのもどうかと思いまして。
という訳で、すぐ隣に同じくらいの深さで入り込めるように穴を掘ります。
幅は泉も直径が三メートルくらいだから、同じくらいでね。
ここが広いから、こんな大雑把な方法ができるんだけど。
飛ぶのもまずいので、階段を作って上にあがりましょうか。
お次は【星青魔法/柔】で泉と掘った穴を遮っている壁の一部に穴を開けまーす。
この穴の高さまで、泉の水が移動したら穴を塞いで泉の方にも階段を作って降りましょうか。
ホースでもあったらサイフォンの原理でもう少し簡単に水の移動ができると思うんだけど、ここまで水が少なくなれば後は簡単。
ガイエスが『魔力を感じる』と言った辺りを、さっき掘りだした時の土と岩を使って水面の上まで出るように埋め固める。
水がその周りに移動するから水位が少し上がったが、岩の天辺はちゃんと水から出ている。
埋めた場所と階段をくっつけて、階段に水が入り込まないように両サイドを岩でガード。
さっき埋めた岩の柱の周り十センチくらいだけ残し、コの字型の壁になるように岩を取り除く。
はい、魔力が在る場所からは、水がなくなりました。
「……なんつー……確かに『力技』だな」
「俺、水系の魔法で使えそうなの持っていないし、土系もあまり使っていなかったから上手くいってよかったよ。な、掘ってみていい?」
「ああ。何かありそうだからな」
ここは特異日に魔効素供給のあった場所だから、出て来るのは……あ、やっぱり。
「石板、だな」
「そーみたいだな」
ぱっと見では読めないけど、間違いなく何か書かれていそうだよなぁ!
土を払いのけ、復元すると……びっしりと書かれた『神約文字』が浮かび上がる。
方陣は……ないな?
え?
なんで……ここで『ニファレント』の名前が……?
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『緑炎の方陣魔剣士・続』陸59話とリンクしています
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