第884話 妄想特急マウヤーエート号
俺が考えている妄想歴史の時系列を、まず説明しよう。
皇国に対してのアクションは、マウヤーエート国内がいくつかの勢力に分裂して小競り合いだけで済まなくなってきた頃からだと思う。
ただ、この頃は『シカトしてんなよ、助けろよ』っていう上から目線の態度だったに違いない。
なにせ、マウヤーエートの方が圧倒的に国力があり、当時は皇国よりもずっと豊かだったから『利権をめぐる内乱』になっていたと思うのだ。
だが、皇国は従わなかったし、なんなら完全無視だった。
おそらく信仰が揺らいだ時期とか、国としての内政に力を使わねばならない時で、立て直しに必死だった頃と重なったりしたのかもしれないが、そこら辺の確証はない。
皇国がスルーしていた間も、マウヤーエートでは国ができては滅び、そしてまた新しくまとまりと、国境線は目まぐるしく変わったことだろう。
だが、
皇国に対しても決して
そしてきっと、その中のあるタイミングで『マウヤ』という国名でまとまった時代があったのかもしれない。
だが、その国としてまとまったのは
結果としては、統一は失敗に終わり著しく国力を落としたから、流石に
タルフとして離れていった者、アイソルへと入った者達、そしてきっとアーメルサスやオルフェルエル諸島に流れた者達もいたはずだ。
ドムエスタについては全く不明なので、マウヤから入った人が居たかどうかは解らない。
建国時期も何も解らず、いつの間にか『あることが当たり前』のように記載されている国だったからな、皇国の記録でも。
なので、今回の話ではドムエスタは無視。
裏で関わっていたかどうかも、解らないから考慮には入れない。
また、大陸内でも国が分かれて今度は決定的な対立構造となった。
そうしてマウヤーエートは『古代の国』となり、マウヤは分裂して名前すら大陸では残らずマイウリアとガウリエスタが建国、その後マイウリアからディルムトリエンが分かれた。
アーメルサスの体制が確立したのもおそらくこの頃。
分裂したマウヤの国々が皇国に対して
具体的には、四千年くらい前だと思う。
まぁ、ここら辺はタルフの歴史書の『マウヤからの脱出』が書かれた冒頭部分の年代からの推測である。
当時のマウヤから離れた彼らは皇国を『貧国』としていたし、その貧国に擦り寄りはじめた新しい国『マイウリア』を激しく罵倒していた。
まだ西側が皇国を貧国だと思っていたということは、全く交渉がなかったからだろう。
実際には既に相当前から、皇国は現在に近いくらいまでの豊かな国となっていた。
大峡谷が西側と皇国を完全に分断していたが、皇国側は遙か昔に作られていた『橋』を有しており、まだガウリエスタとアーメルサスの国境が接することもなく……おそらく、どの国も少数民族達を介しての付き合いだけがあったのではないだろうか。
いや、もしかしたら『橋』は少数民族達が造ったものかもしれない。
皇国のあらゆる魔法で壊れず、ビィクティアムさんの『神斎術と血統魔法コンボ』で初めてその橋が落ちたのだから……『大地』と親和性の高い魔法で造られたものだったのだろう。
そっか、もしかしたら『サラレアの盛焔』や『ハウルエクセムの塊岩』で落ちなかったのは、地系の魔法では傷つけられない『加護』があったのかもね。
ビィクティアムさんの迅雷は『空系』だから、一撃だったってこともありそうだよな。
おっと、話が逸れた。
そうこうしているうちに、少数民族達の国……とまではいかずとも集落があったと思われるアーメルサスとの国境辺りにまで、ガウリエスタが進出してきた。
彼らは逃げるように、各地に散っていっただろう。
その時に皇国内に入った者達もいただろうし、ガウリエスタの東側から大峡谷近くの森まで入って隠れ住む者達もいたはず。
そして、少数民族がいなくなって国境が接したガウリエスタとアーメルサスは、後に何百年にも渡ることとなる戦争状態に突入。
できてまだ千年いくかいかないかのアーメルサスも、魔力量の少ない人達ばかりだったせいか国力はイマイチだし、ガウリエスタは
ここから……皇国への『媚び』が始まったのだと思う。
言葉で、物品で、冒険者という労働力で、懸命に皇国へアピールをはじめた二国。
しかしその頃には既に皇国はあまりに盤石で、彼らの出す『甘い水』はただの泥水と同義だった。
その二国が媚び始める少し前には、マイウリアが『海路から』皇国に接触をしていた。
南国ならではの作物や香辛料などの多くを皇国へ入れ、皇国サイドでも『辿り着いたもの』は受け入れるスタンスだったので、どんどんとマイウリアのものは皇国へ入っていく。
マイウリアは皇国との交易を開始して、北側二国との差を広げていった。
おそらく、この頃は最もマイウリアが優勢だっただろうから……欲が出たのかもしれない。
皇国を従えられるかも、というのではなく、皇国を後ろ盾にすれば絶対に西側全部を手中にできるのではないか、という
だけど、皇国内にマイウリアからの移民も増え、マイウリア国内で『自分の国より食べものに困らなくて皇国の方が暮らしやすいんじゃね?』が広まっていったに違いない。
それはガウリエスタでも同じで、マイウリアとガウリエスタは皇国からの利益独占を目論んで更に仲が悪くなっていく。
マイウリア、ガウリエスタ、アーメルサスの三国内では『皇国に味方してもらえた国が西側を統一できる』なんて思ったとしても……解らなくはない。
そうして互いの移民や貿易を牽制しまくり、争いを重ねるうちに……自国に迷宮ができ始めてしまう。
いや、できていたのはもっと昔だと思うけど、人の暮らす範囲でまで表面化してきて容易に魔獣達が人里に来られるようになっちゃったってことかな?
ここで、昔のマウヤか古代マウヤーエートで言われていた『大地の穢れ』というものと迷宮が結びつく。
作物の不出来や食糧難を、穢れという対処不可能なものに押しつけて国策の失敗を誤魔化そうとした一時凌ぎだったかもしれないけれど。
ガウリエスタは冒険者を各地から大量に呼び寄せて対応しようとし、その時に仕事を与える目的もあって『書簡の配務』を冒険者にさせるようになった。
これは多分、失策だ。
冒険者達の手によって集められたガウリエスタの情報は全部、冒険者組合本部のあったアーメルサスに集積することになり、アーメルサスはガウリエスタを効率よく攻撃し始めた。
アーメルサスは国力を上げ皇国への橋をほぼ手中にして、皇国はアーメルサスとも取引をするようになる。
ガウリエスタは冒険者という『アーメルサスで迫害されているだろう人々』が、アーメルサス政府に協力するはずがないと思っていたのかもしれない。
だが、冒険者達は『金を払う方につく』だけだったのであろう。
そして、マイウリアは冒険者ではなく皇国を動かそうとした。
まずは『仲良くなって助けてもらおう作戦』の継続だったのではないかと思うんだけどね。
争って勝てるなんて、この頃は全く思っていなかっただろうし。
だが、海路で皇国に渡る人が増えてくると、どうやら皇国は北のヘストールという国やポルトムントという国と交易があるらしいと知った。
仲良くなって助けてもらうには『皇国にとって一番の貿易国でなくてはならない』と思い込んだマイウリアは……ここで、ヘストールとポルトムントが『皇国から嫌われるようにしよう』と考えたのではないだろうか。
武力と国力があったらぶっ飛ばしに行くという選択肢だったかもしれないが、そんな力も魔法も金もないし、マイウリアからは距離がある。
彼らがヘストールとポルトムントを知るうちに、これらの国にも迷宮が数多く存在している情報を掴んだ。
ならば……毒物を撒いたり、作物が駄目になったら、すぐに滅ぼせるのでは? と考えたとしても不思議ではない。
自国が今まさに、それで滅びようとしているのだから。
皇国に助けてもらうのは『
この時に一番最初の『ヘストール語』の『犯罪指南書』が作られ、ヘストール国内をめちゃくちゃにするために使われた。
これに関してはある程度上手くいったが、ヘストールを揺るがすほどではなかったと思われる。
それをマイウリア側が、正しく理解していたかどうかは解らないけど。
ここまででビィクティアムさんから片手が上がり、一度話を止める。
まだこれからなんだけどな。
「……そんなところからの説明で、辿り着くのか?」
「前提条件というか、ここら辺を踏まえて、なのでもう少しお付き合いください」
では、続き、参りますよー。
やだな、答えに辿り着くまで長くても、お尋ねになったのはそちらですからね。
聞いてくださいねっ!
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次話の更新は9/16(月)8:00の予定です
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