第873話 超お急ぎ案件
諸々の契約をスッキリすっぱり整理整頓致しまして、再契約確認の書類をレーデルスのバーライムさん、セラフィラントの各港湾事務所に書簡を送っていただいた。
ウァラクのワシェルトさんとテトールスさん、カタエレリエラのエイリーコさん達は、近々こちらに納品に来るからその時に確認してもらう。
そして、シュリィイーレ内の契約者さん達の所には、俺が直接お届けに参ります。
ヴァンテアンさんの色墨店に行った後、エイドリングスさんとラディスさんの所に行って、マーレストさんの木工工房とレリータさんのお店に寄り、ベルデラックさんとそのご両親にもご挨拶。
そのまま南東市場のナトレシェムさんのお店に行ってから、トリセアさんのお店に顔を出しレンドルクス工房へと足を運ぶ。
そして一番工房の始業時間の遅いデーニヒスさん……と。
夕方にリシュレア婆ちゃんの所にも行かないとね。
最後に疲れを癒やすためにもエクウスを……いや、デルデロッシ医師をご訪問。
はぁー……エクウスー、ガイエスが送ってくれた飼料、どれがお気に入りだったー?
ヒンヒン、ヒヒン!
……んー……解らん。
まぁ、可愛いからいっか!
あ、はいはい、ビルトルトには
さてさて、飼料の件は家畜医さん達に聞こうかな。
「エクウスはこれ……この大麦が少なめのものが、気に入ったみたいです」
「そっか、大麦はイマイチだったか」
「お米とか米糠は好きみたいです。あと、大豆が入っているのもよく食べていますよ」
なるほど、じゃあ、この配合のものをガイエスにお願いしつつ、
一応通信の前に位置確認をしようと思って『方陣GPS』を見たら、なんだかヘストレスティアに行っているみたいだ。
うーむ、いきなり話しかけたら危ないかもしれない。
それに今ヘストレスティアだとしたら時差があるから、多分あっちはもう夕刻だろう。
食事中だったら、もっと申し訳ない。
取り敢えず、必要なものの転送だけはしておこう。
ティスモスさんから聞いた契約ごとの注意事項を纏めたメモ、そして俺からの『個人契約依頼書』と契約書簡。
それと、送ってくれていた飼料で買いたいもの数量と外袋を送っておく。
もし契約してもらえたら、この飼料の買取が一番最初の取引になるかもなー。
〈タクト!〉
「うわ、吃驚したっ!」
つい、叫んでしまった。
どーした、どーした、いきなり!
すまん、と謝りつつも、ガイエスは今すぐに契約書に署名して送り返すと言う。
「おい、ちゃんと約定書は読めって」
〈大丈夫だよ。ちょっと……急ぐんだ。頼む〉
「……それはいいが……本当にいいのか?」
〈当たり前だ。おまえと以外に、取引契約なんてしたいとは思わないし、俺としても……ありがたい申し出だ〉
最大の賛辞だが、この慌てようはガイエスらしくない。
何かあったかな?
俺との契約が結ばれることで、良い方向に行くのなら大歓迎だが……
なんとなく、通信の向こう側でガイエスが緊張しているような、固唾を吞んでいるというような雰囲気が伝わってきた。
「おまえが了承してくれるなら俺は嬉しいし、今後もいろいろと頼みやすくなる。あ、飼料の取引も頼めるよな?」
〈飼料は問題ない。商人組合での承認が出たら、すぐに教えて欲しい〉
なんかもー、最近のあいつ関連は、お急ぎ便が多いなー。
あっという間に署名と指輪印章の押印がされた契約書簡が届き、メモ紙が一緒に……おおおおっ?
『
マジかっ!
……ソッコーで商人組合に飛びましたね。
口に出さなかったということは、もしかしたら誰かが近くに来たか?
そう言えば、結構くぐもった声だったな。
あっという間にもらったガイエスのサインと押印にティスモスさんは目を白黒させていたけど、すぐに『個人契約締結証明』を出してもらった。
ガイエスも俺も千年筆での魔力署名と魔力押印だったので、すぐに鑑定板を使っての登録と締結の『封』も終了。
俺はまた即、部屋に戻ってガイエスに転送し、通信を繋げた。
オークションなら、結構お金も必要だよな。
「ガイエス、金は平気か?」
〈一応、皇国小金貨は十数枚あるから大丈夫だと思うけど……いくらくらいで取引されるかは解らない〉
さっきより、声が小さい。
周りに人がいるのか。
「競りや価格交渉の時は通信繋げながら、撮影もしてくれ。どんなに朝早くてもいい。金と魔石は、足りなくなったらこっちから送る!」
〈……解った。じゃあ、登録に行ってくる〉
頼んだぞ、凄腕バイヤー!
明後日は朝方からしっかり準備して望まねば!
えっと、お金は……う、大金貨、両替できるかな?
他国だと大金貨は扱えなかったはずだから……ふぉーー、小金貨、全然ないーー!
お役所に行ってもあるだろうか……?
大慌てで役所に駆け込み、なんとか小金貨五十枚ほどは確保できた。
元々大金貨の両替は、予め申請していないと二枚分だけしか替えてもらえないのだ。
こんな時も、シュリィイーレは辺境だと実感してしまうのである。
王都中央まで行かないと、両替ってできないことが多いんだよなーー!
自販機全部から銀貨と銅貨も回収して、更に二枚分の大金貨両替ができた。
……なんとか……これで足りるといいんだが。
だが、めちゃくちゃワクワクするし、何がなんでも競り落としてもらいたい。
迷宮核って言ってたから、相当魔力も蓄えられていそうだし保存状態も本と判るのなら読めないという程までは悪くないだろう。
見つかった場所によっては、ヘストールのものでなくてその前の時代のディエルティの可能性もある。
ディエルティには、文字があったかどうかすら解っていないからな。
歴史的大発見の可能性もあるってことだ。
いや、ヘストール語だったとしても、それが元々はディエルティの文字だったてこともあるか。
どっちにしたって素晴らしい資料に間違いないのだ!
契約後の初取引が……迷宮核ってことだよな?
それもなんだか、格好いいか。
いかん……予想外のお宝ゲットの予感にワクワクが止まらないぞ。
落ち着け、落ち着け……今日の夜はまた魔法バリバリ使う予定だから、早めにご飯を沢山食べて仮眠しておかなくては!
一年振りの『石板工事請負工務店』開店だからな!
*******
『緑炎の方陣魔剣士・続』陸第38話とリンクしています
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます