第848話 メニューはなぁに
ティエルロードさんと別れ、ランチ前の準備に帰宅。
地下の食料庫で材料を集めていた時に、地下の転送部屋に『お荷物転送のお知らせ』があった。
いやぁ、ガイエスくんは仕事が早いよねぇ。
イノブタ用に大麦と麬、
なるほど、ヴェロードの食堂で食べたらしいが、あいつ自身はあまり美味しいと思わなかったのかな?
いつもだったら『保存食にしてくれ』って、メニューが書かれていたりするけど全然それもないし。
まぁ、ビルトルトがいっぱい食べてくれるから、なんとかなるだろう。
意外とテーレイアも食べるみたいだし、足りなくなったら複製してあげよう。
それに大量の山羊のチーズ!
これは熟成して欲しいってことですね?
了解、了解っ!
おおお、西瓜まで……あいつ、エルディエラも行っているのか?
あれ?
今、皇国内を巡っているということは、当分は旧ジョイダールに行かないってことかな?
まさか嫌なことがあって、メンタルリカバリー中じゃないだろうな。
後で、通信しようかな。
覚悟が要るからなぁ、あいつの冒険記録の確認って……いや、オルツの皆さん、大変だよねぇ。
破格の冒険者さんがいると。
まっ、だからこそ、俺の自慢の友達なんですけどねっ!
今日のランチは、鶏肉のさっぱり焼きと胡瓜と人参の入ったポテサラです。
夏場だから俺としては冷やし中華など食べたいところなのですが、皇国ってどうも麺料理は全くと言っていいほど、何処の領地でもないみたいでしてね。
スープ文化がないせいもあるのかもなぁ。
少ない煮汁で煮込んじゃうと、麺だけになっちゃうもんねぇ……
つけ麺も、スパゲッティ的なものも生まれなかったのかと思うと、残念でならない。
パンがいくらでも種類があるから、麺文化が発達しなかったのだろうか。
まぁ、俺も冷やし中華と蕎麦以外は、麺ってさほどでもないんだけどバリエーションとしては欲しいかなーと。
だけどねー、麺だと何かを練り込まないと魔力が少ない上に抜けやすいんだよねぇ。
表面積の問題なのかな、なんて思ったりするのだが……ちょっと挑戦してみたくもある。
だけど問題は食べ方なのだ。
箸は論外で、フォークを『回して巻き付ける』なんてこともちょっと難しい。
細長いものを
そして子供は多分零しやすくて、なかなか食べられずに焦れるだろう。
食べやすさ重視ならば、同じ材料で作れるショートパスタの方がずっといいのだから、普及なんてしないよなぁ。
うん、当分の間、麺は俺が自分で楽しむためだけに作ろう。
俺がぼんやりとそんなことを考えていた時、俺のエプロンをくいくいと引っ張るアフェルに気付いた。
どうしたのか尋ねると、物販コーナーに引っ張って連れて来られた。
「おとーさんがすきなのが、わかんない」
「トリュイトさんの?」
「うん、おかーさんがね、なくなっちゃったっていってたから、かうの。だけど……いっぱいあって、よくわかんない」
アフェルのお父さんのトリュイトさんは、お魚好きで何度もラウェルクさんの店で会ったんだよな。
だけど、どの魚が好きかは……知らんぞ。
いや、牛肉も好きだったし、イノブタも……よし、アフェルに聞くか。
「えーと、トリュイトさんはアフェルと同じ
「さわらは、ぼくがもらうの。そのときは、おとーさんは、たまごの、たべるの」
「玉子のは……焼いてるのかな? それとも、煮てるもの?」
「あげたやつ! だけどね、それじゃないの。それはあるから」
「じゃあ、魚かな……その魚って、格好いい?」
「まるい!」
えーと、えーと、アフェルが格好いいって言うのは鰆と
だけど
丸い……?
あっ!
鮭のパイ包みか!
うちのパイ包み、ドーム状なんだよね。
鮭は徽章を作っていないから、名前を覚えていないんだろうな。
「これかな、アフェル?」
「あーっ! そうっ、それーーーまるいのーー!」
そうか、箱入りだったから形が見えなかったんだね……
鮭の名前を覚えていなかったから、文字だけじゃ解らなかったってことだな。
自販機に、料理の写真を貼っておくか。
「これで、げんきになるねっ! いっぱい、かうっ!」
「……元気……って、トリュイトさんは具合が悪いのか?」
「おねつ、あるみたい?」
よし、一緒に行こうか。
もし病気だとしたら、パイ包みを食べられる体調じゃないかもしれないもんな。
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