第642話 ご新規さん再確認

 結局、全員が初見のものですからね、話したところで全てがただの推測憶測想像妄想な訳で。

 できることが増えていたり、できたことがあったら報告するようにということで本日のところは解散です。


「あ、タクト様、近いうちにメイリーンさんと一緒にいらしてくださいね」

 テルウェスト神司祭にそう言われ、一瞬なんのことかと思ったが『仮婚約証明司祭』の変更だと思い至りなるべく早く伺います、と約束をした。

 明日は確か、メイリーンさんが午後は休みと言っていたはずだ。

 こういう手続き系は、さっさと片付けるに越したことはないのだ。


 そしてレイエルス神司祭から、手紙を一通渡された。

 レイエルス侯からのもので、思っていたより諸々時間がかかっており、春祭りの前にはシュリィイーレに来られそうもない……というお詫びのお手紙だった。

 それは仕方ないだろう。


 俺がビィクティアムさんに話した『皇国の英傑や扶翼でない物語』が、貴族の蔵書にもあると知らせてしまったのだから、今、司書書院でも大慌てで確認が行われているに違いない。

 レイエルス神司祭にその件を俺が詫びていたと言うことを伝えて貰いつつ、俺からもお知らせしてお詫びしたいことがあります、と予め書いておいた手紙をお渡しした。

 ついつい興が乗って、中身を全部読んじゃったお手紙の件だ。

 このことは、改めてレイエルス侯にご判断いただければ、ということで。



 家に戻ると、ランチタイムのまっただ中。

 慌てて手伝いに入ろうとしたら……父さんに呼ばれた。

 俺が何処に行っていたのか聞かれてしまったのは、ビィクティアムさんに朝食を届けに行っただけのはずなのに全然帰らなかったからだろう。

 どうやら、蓄音器体操の子供達が俺がいないと、父さんに泣きついたらしい。

 ……明日、謝ろう……


「……え? 教会に行ってたのか?」

「うん。なんか、教会で職位の改変があったらしくて、再登録? みたいな感じ」

「ああー、ちらっとファイラスが言ってたな……そうか」


 セインさんのことを言おうかと思って、止めた。

 俺が、正式発表の前に知らせていいことじゃないよな。

 多分なんだかんだ言っても、父さんはセインさんのことを心配しているみたいに感じるし。

 俺だったら詫びに来るのは無理としても、手紙の一通も送ってこない人に何も思わないけどな。


 食堂に行ったら、丁度メイリーンさんが同じ病院のカーチェナさんと一緒に食事に来たところだった。

 明日の午後のお休みを再確認し、スイーツタイム終了後にちょっと一緒に散歩に行こうよ、と約束をする。

 その時に、仮婚約証明司祭の変更について話そうと思う。


 今ここでは……セインさんのこと、言えないからなー。

 食堂の皆さんは情報拡散力あり過ぎて、ここで口にしたら明日には町中に知れ渡りそうだもん。


 そして、ランチの後のスイーツタイム真っ直中に、今年初のセラフィラント便が到着!

 牛乳とお魚さんがたんまりですよーー!

 ひゃっふーーーー!

 俺がガンガン馬車から物販スペースを通って番重を地下倉庫へと運び込む姿に、食堂のお客さん達が何が届いたのだろうと背伸びをして覗き込む。


「あれ全部食材かしら?」

「いつもながら凄いねぇ。でも、今年も新しいものがいっぱい入って来たってことは、明日からまた献立が増えるわね!」


「おっ、あの印章はセラフィラントの街区印章だぜ!」

「てことは、ロカエの魚か! 明日から暫く通うぞ!」

「ロカエの帆立は、ここでだけしか食べられないからなぁ。あるかなぁ」


 ほっほっほっ、皆さん楽しみにしててくださいよ。

 明日はガッツリ入って来た鮭で、やっと母さんにも作ってもらえるようになったパイ包みにしますからねっ!

 まだ切り身じゃないと触るのを嫌がるけど、鮭とか鮪なんかの大きめサイズは俺が全部捌いてしまうから、母さんも料理に取り入れてくれるようになったんだよね。

 魚体が小さい方がダメみたいだから、母さんの目下の敵は鰯と小鰺と秋刀魚だ。


 おおっ、デートリルスからの海藻類もいっぱい届いたぞー!

 カフェジェリも作っておこうっ!

 牛乳は、初便で来たのはちょっと少なめだけど次の便ではかなり増える予定。

 生クリームとバターを作っておいて、次の便をチーズにしようかなー。


 次に送ってもらうものの空容器を積み込む時に、アリスタニアさん宛に水牛の乳用の容器も六缶ほど積んでもらった。

 若薤白エシャレット用の番重と一緒に、リエルトンで降ろしてもらうようにお願いしたので二、三缶くらいは次の便で届くかな。

 水牛は搾乳量が少ないから、あまり入って来ないだろうからね。


 一回それでちゃんとモッツァレッラを作ってから、レシピをお渡ししよう。

 そんでリエルトンや他の町でもモッツァレッラが作ってもらえるようになったら、そのチーズそのものを運んでもらったっていいもんな!

 燻製にしても美味しいんだよなぁ。

 どうやって食べようかなぁ、ふっふふーーん!



 さてさて、夕食前の休憩時間。

 キラキラの食材達で癒やされたので、俺のメンタルは非常に良好な状態である。

 お部屋で確認しますのは……身分証隠蔽解除バージョンである。

 深呼吸、よし。

 どんっ!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 名前 タクト/聖文字魔法師カリグラファー

 家名 スズヤ 

 聖称 エステレェリィアズール

 年齢 29 男

 階位 貴系純統 特等位

 殊勲 イスグロリエスト大綬章

    教会偉勲章

 在籍 シュリィイーレ 移動制限無

 養父 ガイハック/鍛冶師  

 養母 ミアレッラ/店主

 仮婚約 メイリーン/調薬師

 保証人 イスグロリエスト・シュヴェルデルク

     イスグロリエスト・アイネリリア

 証明司祭 ドミナティア・セインドルクス

 魔力 1962171


 【神斎術師 正階】

 硬翡翠掩護・初代 

 貴剛鉱掩護・初代

 神眼 : 蒼・真  

 祭陣・真 斎陣・正 祥陣・準 

 位相変調・真 

 冶金遷移・真


 【神具創錬師 正階】

 錬成・真 鍛造・真 改変・真 

 看破・真 付与・真

 調整・正 修復・正 分解・正

 解呪・正 評定・正

 魔工・準


 【輔祭 聖神位階級】

 書師・聖位


 【神聖魔法師 一等位】

 神聖魔法:聖生充育・完璧

 神聖魔法:極光彩虹・完成

 神聖魔法:天翔空軸・完成

 星青魔法:地/柔・極位


 蒐集魔法・極冠 文字魔法・極冠

 付与魔法・極冠 集約魔法・極冠

 加工魔法・極冠 複合魔法・極冠

 耐性魔法・極冠 清浄魔法・極冠

 音響魔法・極冠 顕微魔法・極冠

 金融魔法・極冠 彩色魔法・極冠

 言語魔法・極冠 予知魔法・極冠

 造型魔法・極冠 精神魔法・極冠

 臨界魔法・極冠 探知魔法・極冠

 迅速魔法・極冠


 建築魔法・極位 複写魔法・極位 

 

 烹爨ほうさん魔法・特位

 稍療しょうりょう魔法・第一位

 風制魔法・第三位 命銘魔法・第三位


 【適性技能】 

 〈極冠〉

 鍛冶技能 金属看破 神詞操作

 貴石看破 鉱物操作 液体鑑定

 魔眼看破 液体調整 大気調整

 大気看破 予見技能 感覚操作  

 〈極位〉

 海洋鑑定 木工技能 表象技能

 粒子操作 土類鑑定 土類錬成

 〈最特〉

 造営技能 普請技能 映写技能

 〈特位〉 

 創図技能

 〈第一位〉

 調律技能 覚感技能

 〈第二位〉

 均平技能

 〈第三位〉

 隠密技能 真正判別

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 なんか神斎術、増えとる。

 魔法と段位表記が違う……【斎陣・正】【祥陣・準】って【祭陣】の隣に出ているということは、同じカテゴリーってことなのかな?

 普通の魔法や技能と違ってカテゴライズされているのか、神斎術は。

 この名前は当然、方陣的なものだよな……もしかして、今までと違う『円』が使われている方陣の解析とかしたせいか?

 もしくは、神約文字での方陣組み立てかなー。


 どっちもありそー。

 まぁ、このへんはいいや。

 本当は良くはないのだろうけど、どーせ隠しておくし【文字魔法】で方陣がカバーできるっていう設定にしているからさして問題はあるまい。


 新しい『神具創錬師』ってのは、多分『神斎術』とはカテゴリーの違う『技能職』なんだろうなぁ。

 魔法でもないし術でもないから、俺の設定していた隠蔽条件に入らなかったってことだろう。

 そもそも『神具師』っていうのは神話と伝承の中では知られているんだから、かつてはいたんだよな……生命の書の技能版みたいな本があったら、載っているのかもしれない。


 そして、神聖魔法の方……消えているのは【発酵魔法】と『成長操作』……お纏めされたってことだな。

 どちらも植物だけでなく動物にも作用するものだから、動物系がコンプされたことで一緒になって神聖魔法化した……ということですかね……

 ふぅーーー……自己責任、自己責任……

 心を落ち着かせる呪文である。


 新しく出ちゃっているのは【命銘魔法】ですか。

 隠れていたということは、聖属性で間違いないね。

 あれ?

【命名魔法】とは違うのかな?

 あ、生命の書に載っているやつだ……『人以外のものに名前を与え祝福する魔法』……命名の方だと人に名付けができるってことか。

 なるほどーー! そっか、エクウスか!


 今まで物品とか建物とかへの名付けは散々やったけど、ストロマ君アコヤ君達で海の生き物とかの魚介に、そして馬に名付けたことで試行による発現条件が揃ったのかもしれない。

 ってこたぁ、エクウスくんにも、ちゃっかり加護とかついちゃってそーー。

 健康に育ってくれそうでなによりってことで、いーかな。

 今度エクウスに会いに行ってみようっと。


 そーだ【治癒魔法】がなくなっちゃっているから、聖魔法を表示しておこうか。

 ぱっと見では【神聖魔法:聖生充育】が【治癒魔法】をカバーできているとは思われまい。

 えーと、【清浄魔法】と【命銘魔法】にしておこうっと。

 どっちも派手に色々やっちゃっているから、顕現していても変に思われないだろうし。


 それと技能の方に『真正判別』ってのがいらっしゃってますけど、隠れていたということはこいつも聖属性か。

 どーせ加護とか視える魔眼って知られてんだから、表示しててもいいかなー。

 逆にこの技能が出ていれば、魔眼由来じゃなくて技能の予兆でしたよーで済んだり……は、しないかな?

 うん、こんな感じで。


 魔力量はパワーバンク込みの数値だから、なしの時の俺単体の魔力量は『170182』か。

 五割表記のままでいくしかないな。

 ビィクティアムさん達に見られる前だったら、調整できたんだけどなぁ。


 あ……見づらいから銀で見ていたけど、ホロのままなのかな。

 色の偽装を解除すると、ホロっぽいのは相変わらずなのだが以前より蒼みが増したような気がする。

 賢神一位の加護が強くなったってことなのだろうか。

 いつもありがとうございます、神様達。


 でも、できれば魔法とか技能とかに変化があったら、こう、『ピコーン』みたいな音が鳴るとか、なんらかのお知らせが欲しいです……

 あ、でも成長が解っちゃうビィクティアムさんには聞こえちゃいそうだから、サイレントの方がいいのか。

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