第521話 遊文館準備と第一次審査
一気に片付けました、遊文館内装整備。
予め、本棚などの資材を切り出しておいてよかった。
必要魔法は既に組み上がっていて【集約魔法】の緋色金プレート作ってあるから、ちょちょいっと付与すれば完了ですよ。
地下はうちの地下に使っている魔法と同じだから、こちらも簡単だ。
そして、うちの秘密書庫の本は、すべてこちらに転送して整理整頓!
はーーーー、魔法って素晴らしい。
朝のロードワークから午前中に、摘み食いを欠かさずに仕上げが終了。
おお、魔法を使ったあとに、もの凄く空腹を感じるようになったぞ。
内臓と脳からの『なんか食え!』というサインが誤魔化されてしまうほど、魔力に頼っていたのか……
今までって、お腹空いたって感じた時はきっと本体魔力残量五割切った時とかだったのかもしれない。
もしくは、コレクションからの強制搾取が始まった時とか。
そりゃ、身体がヘロヘロになっちゃう訳ですよ。
自分ファーストの俺が、なんという体たらく。
一度うちに戻って、早お昼をいただきます。
ガッツリ食べて、更に焼いたパンとおむすびを持ち歩き用のお弁当に。
これに合うお総菜を買って、後で食べよう。
楽しいなぁ、こういうのも。
そうこうしている時に、表にリンディエンからの馬車が到着。
……八台も馬車が……そっか、重いもんね。
サクサク軽量化して、その場で一旦うちの地下へ。
で、全部に【複合魔法】と【集約魔法】の補修にかけたら、これまた全てを複製。
ぱらぱらっと見て、日記とか個人的な書き付けでないものだけを遊文館地下へ転送。
それ以外のものは作っておいた『リンディエン』の棚へ。
そんな感じでナルセーエラ、ハウルエクセム、サラレアそして……レイエルスからの蔵書も続々と届き、九割近くは遊文館地下に転送。
備忘録や日記みたいに個人的なものは、セラフィエムスほど書いている家門がなかった。
そして各地の絵本もガッツリ届いたので、こちらはすべて遊文館へ。
中にはやっぱり『皇国っぽくないもの』が、かなり混ざっている。
この辺は後で分類だな。
そして、そして!
ものすごーーーく楽しみにしていた、各地の香辛料と調味料がドカンと届きましたーーーー!
ひゃっふー!
ありがとうございます、レイエルス侯!
おお……油まであるぞ!
あ、リバレーラの米油だ。
ケッパーとか
胡椒も何種類もあるし、野菜を煮詰めたソースなんかもあるな。
……魚醤がないのが不思議だが……辛子粉(赤唐辛子)、辛菜粉(芥子菜)、辛瓜粉(青唐辛子……かな?)、辛茄子粉(ハバネロっぽいなぁ……)てか、辛いもの多いな!
砂糖も種類が多いけど、上白糖までは作っていないみたいだな。
それにしても素晴らしいラインナップだ。
全部の外袋に、どの領地のなんて町で買ったか書かれている。
絶対に図鑑、作らなくては!
カラーで!
今年の冬は忙しいぞーー!
到着ラッシュが一段落しまして、皆様の予定をすりあわせて『絵本コンクール第一次審査会議』を開催いたします!
教会に行ってこの間テルウェスト司祭からされた『お願い』を片付けて、一段落したところでレイエルス神司祭がご到着。
越領門の部屋でお迎えして、テルウェスト司祭と一緒に衛兵隊の護衛付きで食堂応接室へとご案内。
ビィクティアムさんにも、お越しいただきました。
「態々のお運び、恐縮でございます」
「いいえ、嬉しいですね、このような画期的な催し物に参加できるのは」
レイエルス神司祭は、笑顔で真っ先にいらしてくださった。
残念ながら、レイエルス侯はお仕事で来られないらしい。
第二回の時は、是非ともご参加いただきたいものだ。
「俺も楽しみだな。選ばれたものは、タクトが本にするのだろう?」
はい、左様でございますよ。
ご協力いただいた皆様にも、入選作品の書籍を贈らせていただきます。
ビィクティアムさんがニヨニヨってしたので、生まれてくるお子さんのために欲しかったのだろう。
……そういえば、レティさんの方はまだ大丈夫なのだろうか?
そろそろなんじゃないのかな?
「ああ、セラフィラントから報せがあったら、すぐに通信石に連絡が来る」
流石です。
テルウェスト司祭はちょっと緊張気味だったが、紅茶でなんとか落ち着いていただいた。
それでは……と取り出した『絵本』の数々に、皆さん一瞬息を吞む。
ですよねー、めっちゃ多いでしょ?
「募集条件を満たしていないものは省いてます。これだけでも、かなりの数ですけど。題材ごとにまとめていますので、それごとに選考を。あ、ひとつだけに絞らなくていいですよ」
「確かに、これは絞りにくいですね……」
テルウェスト司祭が驚きつつも、目を輝かせている。
子供好きだからなぁ、司祭様とか神官さんたちは。
公平を期すために執筆者、製作者の名前はすべて伏せてある。
なぜ『製作者』なんて人がいるのか……というと……
「おい……これって、刺繍か?」
「全部の絵が、刺繍になっているんです。凄いですよー? ほら、この海の箇所なんて、圧巻です」
そう『画材とサイズを自由』にしたことで、とんでもない技術や魔法を持った方々があらゆる表現方法で参加してくれているのである。
「こっちは木彫りです。一枚一枚、全部浮き彫りになっていて、色が付けられています」
「こ、これは、色紙をちぎって貼り付けているのですか?」
切り絵もあるし、モザイクタイルのものもあるのですよ。
そして……
「これは、色硝子を嵌め込んで作られた『絵』です」
なんと、なんと!
ステンドグラスの絵本まであるのだ!
「……素晴らしいな……こんな発想で『物語』を描こうなんて」
ビィクティアムさんが透かし彫りの『絵』を見入っているし、レイエルス神司祭もパッチワークのように縫われたぬいぐるみが活躍している『絵』に釘付けだ。
勿論、紙にインクで描かれた絵本もバリエーションが大変多くて、緻密なコワイ絵があったりポップな可愛い絵も。
油絵の具で描かれた絵画のような絵が続く重厚なお話や、まるでファンシー小物売り場に溢れている某ウサギやネコのキャラに似たデフォルメがされたキュートなお話もある。
もー本当に、皆さん天才的ですよ!
俺が描かなくって、本っ当によかったーーーーっ!
だが、諦めた訳ではない。
いつかちゃんと『絵本』を仕上げてやるぜ、ふふふふふ。
しかし、こうなると紙に描かれた絵はインパクト勝負で負けてしまうのではと思われがちだが、そんなことはない。
今回の審査基準はなんといっても、その『絵』が物語に合っているかどうかが最も大切。
技術が素晴らしかろうと表現方法が審査対象なのではなくて、選んだ場面がその物語にとって子供達が見たいと思える場面だったかなどが重要だ。
求めているのは子供達が『絵本』として繰り返し読みたいと思えるもの。
独りよがりの技巧自慢大会では、いけないのである。
「なるほど、それを軸に選考せねばならんな」
ビィクティアムさんが居住まいを正し、審査員スイッチがオンになったようだ。
レイエルス神司祭も、そうですね、と頷く。
「我々が読ませたいものと、子供達が読みたいものが違っているかもしれませんから……好き嫌いというより、場面が正しく絵になっているかを見ていく方がいいかもしれません」
「そうですね……これは、なかなか責任重大です」
テルウェスト司祭も真剣に読み始めた。
では、俺はもうだいたい候補を選んであるので、皆様の選考をお待ちしますね。
スイーツとお茶をお持ちいたしましょうか。
候補作品には全て、一時的に強化とか防汚を付けているのでご心配なくー。
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