第45話 文字色の考察

「じゃあ、さっさと燈火を作っちゃうか」

 魔法師組合から帰った俺は、その日のうちに作業を始める事にした。

 宿題は、早めに片付けるタイプなのである。


 一度作ったモノは、作る工程からできあがりまでの手順レシピを書いてある。

 その紙の上に材料を乗せると、自動でできあがるようにしてあるのだ。

 パーツごとに作るので、あとは組上げて魔法付与すればおしまい。

 プラモデルを作るより簡単な作業だ。


 ミニ燈火をサクッと作り上げた俺は、二日後に三個だけ納品することにした。

 あとは日をおいて、少しずつ持っていく。


 できたからといって早めに全部納めてしまったら、余力があると思われてしまう。

 そして次からは常に、MAXスピードが要求されるようになる。


 なので、できたとしても設定された締め切りより早くは渡さないのだ。

 社会人としての悪知恵……もとい、自己防衛である。


 さて、色別の検証に入るぞ。

 俺は何色かのインクを、数本の万年筆に充填した。

「まずは同系統の色で同じ物に付与して、どんな違いが出るか……」

 明度や彩度の違う赤系のインクで、石に空中文字を書いてみよう。




「なんとなく、法則は解ったような……」

 何度となく繰り返して解った事。


・明度が上がると少ない魔力で発動できる。

 だが、持続時間が短くなる。

・彩度が上がると威力・効力が強くなる。

 だが、持続時間が短くなる。


 魔法の使用時間指定をしなかった場合だ。

 彩度が高いと使用指定時間を区切っても、その時間内ずっとは効果が続かない場合もある。


 ただ、その魔法のもともとの持続時間が魔法によって区々のようである。

 継続させたい効果の魔法については定期的に書き直す必要がありそうだ。

 これは【付与魔法】と同じだろう。


 そして、紫とか黄緑などの混合色は含まれる色の割合でどちらの効果が強くなるかが決まるようだった。


 岩石に“硬度変更”と、具体的に指定せずに書く。

 赤紫では、もとのものよりほんの少し柔らかくなったように感じる程度。

 でも青紫だともう少し弾力がある感じの、硬めのグミくらいまでになった。


「混色だと、色味で性質が変わる可能性があるって事か?」

 もっと青みの強い紫だと、どろりとした粘液みたいになるかも知れない。

 使い方によってはかなり便利だ。


 混色は混ざる色でどんな変化があるかは、やってみないと解らないみたい。

「できる事が多すぎて、効率を考えて使い分けるのも大変だな」


 先ずは原色を基本にして明度・彩度の変化を使いこなせるようにした方が良いな。


【文字魔法】は他にも細かく条件指定がありそうだ。

 もしかしたら、書体でも違いが出るかも知れない。


 楽しいけど書けば書くほど可能性が出てきてキリがないな。

 ゆっくり検証していこう。

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