第44話 属性魔法

 暫くして、ラドーレクさんから呼び出された。

 ……何もしてないんだけどなぁ、最近は。

 もしかして、何もしていないからいけなかったのか?



「実は、これのことなんだけどね」

「……燈火の模型がなにか?」

 この間、店で売ったミニチュア燈火だ。


「これに、魔法を付与して、使えるようにした物を売って欲しいと言われててねぇ」

「なんでこんな物が? 普通の燈火より小さいし……」

「それが良いらしいんだよ」


 ダウンサイズがいいっていうなら、普通のやつの小さいタイプでよくない?

 なんだって白熱電球型の模型がいいのか解らん。


「この間、碧の森と錆山で、爆発崩落事故があっただろう?」

「はい」

「春になったらもう一度坑道を掘り返すらしいんだが、その時に使いたいようなんだ」

「なんで今までの物じゃまずいんですか?」


「【付与魔法】で火を点けているとはいえ、燃え続けるのには空気が要る」

 あ、そうか。

 白熱電球型なら空気は要らない。

 その上、引火しやすいガスが出てしまっても爆発しにくいってことか。


「坑道の奥に行くほど火は危険だから……ですか?」

「そのとおり。タセリームに聞いたんだけど、タクトくんは、これを使えるようにできるんだろう?」

「できますけど……仕組みは簡単なので、他の方が雷の魔法を付与すればいいだけですよ?」


 十五センチほどのミニチュアとはいえ、電球部分はちゃんと作ってある。

 フィラメントも竹製で。


「その……雷系の魔法を使える者がいないんだよ、この町では」

「珍しいんですか? 雷って……」

「黄魔法の使い手は、どこでもあまりいないからねぇ」


 ここに来て初めての言葉が出てきたぞ。

「黄魔法……ってなんですか?」

「魔法は属性ごとに分かれているじゃあないか……え? 知らなかったのかい?」


「はい。属性っていうのは、なんとなく解りますけど……分類方法が……」

「そうか、君がいた国では違うのか」


 そして、ラドーレクさんが、ざっと教えてくれた。


 赤魔法…火・土・金属系の魔法 

    石加工や金属鑑定なども含まれる。


 青魔法…水・風・空気系の魔法

    水質鑑定なども含まれる。


 緑魔法…植物・動物に限定される魔法

    動植物の鑑定。

    医療系も含まれる。


 黄魔法…雷・回復系魔法

    大量の魔力を必要とする魔法。

    浄化・解毒なども含まれる。


 白魔法…各色以外の無属性魔法。

    状態維持・耐性などの魔法。

    独自魔法・付与魔法も含まれる。



 ……思っていたのと全然違う。


「君が水を出す時に青い文字を書いていたから、てっきり知っていると思っていたよ」

「偶然です……」

 魔法って色が関係しているのか?


 そうだ、前に色別検証したのは『物品を出す』ことだけだ。

 空中文字では、やったことがない。

 正しい名称さえ書けば物は出て来たし、現象も起こせたから関係ないと思っていた。


 色によって、付与される属性の効果が変わる可能性がある。

 これは……いろいろ試してみないと!

 色は、俺のインクは百色以上あるんだから!


「【付与魔法】が無属性になっているのは、他の魔法もほとんどが使えるからなんだよ」

「他の属性を……ですか?」

「勿論、その属性の適性を持っている人ほど熟練はできない。だけど、魔力量の多さで、なんとか第四位くらいまでならね」


「適性は、何種も出るんですか?」

「人によるね。だいたい一種か二種。君にも【付与魔法】と赤魔法系が出てるだろ?」

「はい……」


「それらは熟練すれば、特位まで使える可能性がある。でも他は普通なら使えないか、使えても初歩の第五位がせいぜいだ」

「付与魔法師は、魔力量でゴリ押しができるってことですか……」

「ははは、そうだね。かなり頑張れば、だけど」


「じゃ、赤魔法系なら、赤い文字で付与するのが普通なんですか?」

「その属性の魔法色で呪文じゅぶんを書く事もあるけど、魔法の発動とは関係ない。威力は増すがね。属性を解らせないように、黒で書くことが多いね」


「そっか……込めた魔法自体に属性があるから、文字の色は関係ないのか」

「君が前に使った……えーと『ゴフ』? だったか。使ったあとに色が抜けた所の模様も、赤だったんじゃないのか?」


 あ、いや、あれは……すんません……

 忘れて欲しいです……

「そうじゃなければ、いくら赤属性持ちでも、君があの威力の魔法を魔力を全く使用せずに出すなんて不可能だしねぇ」

 ほんと、ごめんなさい……



「でも、たとえ付与魔法師でも、黄魔法の使い手はほぼいない」

 うわー……【回復魔法】も使えるとか絶対に言えないぜ……


「この燈火に必要な雷魔法は、ごくごく小さいモノなんですけど……」

「できるのは、君だけなんだよ!」


「えっと……この燈火自体も、誰も作れない……とか?」

「その通り! これは初めての君への正式依頼だ。頼めるよね?」

 お世話になってるラドーレクさんにそんな顔されたら断れる訳ないです。


「わかりました……何個くらい必要なんですか?」

「取りあえずは十個かな。その後は……」


「待ってください! そんなにたくさんは作れません! せいぜい頑張っても十五個が限界ですっ!」

 物作りにそんなに時間を割きたくない!

 俺は、文字書きなんですよ!

 素材もそこまでないし。


「んー……そうかぁ……じゃあ合計で十五個。お願いするね。二、三個早めに渡してくれると助かるなぁ」

「……はい。じゃあ、でき次第持ってきますね」

「うん、頼むね。来月の中頃までに、全部揃えて欲しいんだ。よろしくね」



 すぐにでも色でどうなるかの検証したいのにーっ!

 ソッコーで作るぞ!

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