第39話 ルドラムさんのおかげ

 町に戻って、まずは医者に行った。

 ルドラムさんの治療をしてもらって、念のため俺も診てもらった。


 そのあと、みんなにうちまで来てもらった。

 夕食をご馳走しようと父さんが言ったからだ。

 ルドラムさんの家も同じ方向だし、お礼がしたいからって。

 勿論、案内といろいろ教えてくれたデルフィーさんにもだ。


 事故があったことを知っていた母さんは、随分心配したみたいだ。

 ずっと俺のことを抱きしめて、放してくれなくて困った……

 でもルドラムさんが助けてくれたと話して、なんとか落ち着いてくれた。


「ありがとうルドラム! これからずっとうちの食事、無料でいいからね!」

「いやいや、助けるのも護衛の仕事のうちっすから!」

「遠慮すんなよ!」

「いえ、ちゃんと報酬貰いましたし! 荷運びは役にたってねぇし!」


 ルドラムさんは固辞していたけど……なんていい人なんだろう。

 俺だったら、ラッキーって絶対に乗っかるのに。


 きっと母さんはルドラムさんが食事に来てくれたら、肉を多く乗せたり大盛にしたりするんだろうな。

 夕食も勿論、ルドラムさんだけかなりの大盛だった。

 でもあんまり派手にやると、ルドラムさんがうちに来にくくなっちゃわないかな。



 夕食後、部屋に戻ってコレクションにしまい込んでいた鉱石を出した。

 さて、どんな石があるか確認をしようかな。

 俺の『石判定』は、たくさん経験を積めば『鉱石鑑定』になるらしい。

 そうすると見え方が変わるというのだ。


 鉱石の組成まで、見えるようになったりするのかな?

 そしたら分解と再結晶を【文字魔法】でやったら、かなり純度の高い物ができるはず。

 装飾品なんかに使えるほどの物ができたら凄いな。


 実は母さんの誕生日が来月、弦月の十日だ。

 その十日後が父さんの誕生日。

 俺が採ってきた鉱石を加工した物で、なにか作ってあげたいんだよね。

 もちろん、最高の魔法を付与して。


 どんな石があるかな、早速鑑定&分解(練習)スタートだ!



       ********


 帰り道、ルドラム回想 〉〉〉〉


(本当に俺が助けたのかなぁ……)

(確かにタクトの身体を支えながら、落ちたとは思うけど)


(でも、ずっと抱えていたわけじゃないはずだ……)

(だって、革鎧の前面にも傷がある)


(それに……タクトは俺に、何かしていたような気がするんだ……)

(痛くて、倒れた身体を起こせなくて、意識が朦朧としていたけど)

(なんとなく……タクトが……俺の首とか、背中に何かを)


(うーん、でもなぁ。何もできないよなぁ)

(背負子を降ろしてくれただけなのかなぁ……)


(それにしても、なんでこんなに軽い怪我で済んだんだろう)

(本当にタクトのお守り、効いたんじゃないのかな……)


(あいつの【付与魔法】凄いもんなぁ。きっとこのお守りも)

(……うーん……でも、あの紙で加護なんて信じられねぇしなぁ……)


(うーん……)



(……今日の肉、旨かったなぁ。明日も行こうっと)

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