第29話 無害認定を勝ち取ろう
「では、タクト、最後に君の身分証を確認させてくれ」
「身分証を?」
「間違いなく君が攻撃魔法を使えないかどうか、見ておかないとな」
「疑り深いねぇ、ビィクティアムくんは」
「役目ですので」
「構いませんよ。ここで大きくしていいですか?」
「頼む」
俺は、みんなの前で身分証を拡大する。
ちょっと恥ずかしい気分なのは、何でだろう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
名前 タクト
年齢 19 男
出身 ニッポン
魔力 2300
【魔法師 三等位】
文字魔法 付与魔法
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よし、変わってない、変わってない。
「うん、以前確認したタクトくんの状態と変わっていないね」
ですよね、ラドーレクさん。
「ありがとう。済まなかったな」
「いえ、解っていただけたんならそれで」
副長官さんもご納得いただけたようで良かった。
「確かに、君の魔力で発動してた訳ではなかったようですね」
「……? なんで解るんですか、リシュリューさん?」
「あれだけ大きな魔法を使ったら、魔力が減っているはずですからね」
これに表示されてる数値も、魔法を使うと減るのか……
最大値が表示されてるだけだと思っていたよ。
「いえ……なんで俺の魔力が、減っていないって解るんですか?」
そうだよ、この人とは今日初めてあったんだから。
「ああ、さっき君と初めて会った時に、ちょっと鑑定させてもらっていたんだ」
なんだとーー!
痴漢よっ!
そんなの痴漢行為よっ!
「すまないね、私の右目は生まれつき魔眼でね。勝手に見えてしまうんだよ」
……こういう人もいるのか。
対策しておいてホント、よかった。
ビィクティアムさんは、ガイハックさんとミアレッラさんに軽く会釈して帰って行った。
衛兵隊に俺の事を含めて、今回の一件を報告するとの事だ。
角狼の入り込んだ原因も今、調査しているようなのですぐに判明するだろう。
「あの……ミトカは大丈夫でしたか?」
「ああ、彼に傷つけた個体がどうやら弱毒だったようだし、傷も浅かったからね」
弱毒……?
あ、慌てて書いたから字が汚かったのか……!
効果が薄かったんだな。
「それじゃあ、元々私が聞きたかった事に答えてもらおうかな」
「いいのか、ここで?」
「ええ、魔法師組合長もいらっしゃいますし、身分証も確認しましたし」
ガイハックさんとラドーレクさんにも証言してもらいながら、俺はリシュリューさんからの質問に答えた。
「ふむ……三人の話を聞けて良かった。やはりあの人は、思い込みが激しい上に身勝手だな」
「自分の思った事が正義なのだろうね、彼には」
「……あんな奴じゃなかったんだよ。あんな、子供を盾にするような……」
「人は変わるものだよ、ガイハック」
ああいう変わり方はしたくないな……
でも、どこで間違うか解らないもんなんだろうな、人間って。
「俺は、あった事もないし話した事もないあの人から非難されて、元々やな奴だって思っていたけど」
あいつは、絶対に許せない事をした。
どんな不幸に見舞われていたって、絶対に越えちゃいけない一線はある。
「あいつの言い分だけは、何があっても絶対に認めない」
「タクトくん、君は正義感が強いのかも知れないけど、君自身が無茶するのは感心しないよ?」
「そうだぞ。今回は上手くいったから良かったようなものの、魔獣ってのはかなり危険なんだぞ」
「あ、あれは……正義感というよりは、なんというか、勢い……?」
若さ故の過ちって奴ですよ!
多分!
「まぁ……もう使える攻撃魔法もないようだから、バカな真似はしないだろうけど」
作れるとは絶対に言えんな……
「下手に使うと、君の手が吹き飛んでいたかも知れない。それくらい危険なんだよ?」
そうだった……未熟者の暴走ってのが、頭から抜けてた。
「はい……ご心配お掛けして済みません……」
「まったくだぜ。あとでミアレッラに、こってり絞られるといい」
えええー?
まだお説教、あるのー?
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