第4話 取りあえず歩き出してみよう

 それにしたって、どう見ても日本じゃないよな?

 いや、地球じゃない可能性だって考えられるぞ。

 だって、変な画面から物が取り出せるとか。

 あれか!

 今流行の異世界ってやつか!

 ……更に、生きる難易度が上がった気がする……


 腹が落ち着いたので、改めて辺りを見回してみる。

 周りの木々は……白樺?

 幹が白いから多分そうだ。

 でもなんだか柔らかそうな木だな。


 地面は、傾斜が殆どない。

 ここは高原の森かなんかなのか?

 樹海とか原生林でないなら、もしかしたら近くに道とかないか?


「ゴミ……どうしようか」

 食べたあとのゴミが、あの画面の中に入らないか試してみた。

 でも食品でもなくなっちゃったし、コレクションでもないからしまえなかった。

 小さくして、ポケットにでも入れておこう。

 森に捨てるのはダメだよな、人として。


 まだ、陽が高い。

 俺がここに来る前は夕方だったのに、ここは昼くらい。

 取りあえず、歩き出すことにした。

 ここにいたって、絶対に誰も来ないだろうし。


「異世界ってやつなら……おっかない獣とかいるのかね?」

 おそるおそる歩き出して、少しすると水の音らしきものが聞こえた。

 川が有るのかもしれない。

 川沿いに歩ければ、人里に出られるかも!


 走り出そうとした方向に、なにか、いる。

「……これ、ヤバイ奴では……」

 大きくはないが、狼みたいな……いや、やけに足が短い……でも角とか有るし!

 絶対に、地球上で見た事の無い生き物だし!

 俺の方を向いて唸っているのは、威嚇だろうか?


 目を逸らしたら飛びかかられそうだ。

 でも、逃げないと……

 視線を外さずに、じりじりと後ろに下がる。

 奴の身体が、ぐっ、と沈んだ。

 こっちに飛びかかってくる気だ!


 奴が地面を蹴ったと思った途端に、体勢を低くして斜め前に走り出した。

 そしてそのまま、振り向かずにダッシュ!

 一目散に走る。

 周りなんか見られない。

 後ろを振り返ることもできない。


 大きな岩がある横を抜けて、身を隠そうと回り込んだその時。

 岩の横のぬかるんだ土に足を取られ、そのまま転んで……滑り落ちてしまった。



「……と、止まった……」

 木の根に引っかかって、なんとか止まった。

 後ろ向きに滑ったからか、擦り傷程度しか怪我はしていないみたいで良かった……

 大して高さもなかったようだ。

 奴は、追いついてきていなかったみたいで助かった。


 なんとか、歩けそうな場所はないかとあたりを見てみる。

 ……屋根のようなものが下にある。

「家……? いや、狩猟小屋みたいなものか?」

 なんにしても助かった!

 とりあえずあそこに行って……みて、人がいたら……その方が危険だったりしないか?


 このまま接触して大丈夫なのか、異世界人って?

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