第5話
二人の男は刑事で、女性は桃子の母親だった。
僕は知らなかったのだが、桃子は毎晩、実家に電話を入れていたらしい。ひとり暮らしをさせてもらう条件として、そういう約束になっていたそうだ。
ならば、今まで僕が彼女の部屋に泊まった時は、僕がシャワーを浴びている間に素早く電話を済ませていたのだろうか。全く気が付かなかった。
そんな定時連絡が途絶えたので、桃子の実家では失踪届けを出して、わざわざ母親も警察と一緒になって見に来たのだという。
すると、見ず知らずの男が部屋にいた。だから母親は悲鳴を上げて、僕は警察から不審者として疑われてしまったのだ。
大学生のカップルならば、いちいち恋人の存在を親に告げないのは普通だろうが……。こんな形で相手の母親と初対面を果たすのは、極めて珍しいケースに違いない。
警察の取り調べには、全て包み隠さず、正直に話した。
桃子との仲に問題はなかったこと。彼女を害する気持ちなんて絶対にないこと。
僕たちの間柄を知っている友人の名前も、いくつか出しておいた。
具体的に、デートの回数や互いの部屋に泊まる頻度まで告げたのは、自分でも「話し過ぎかな?」と感じたが、なにしろ相手は警察だ。これも一種の「大は小を兼ねる」だと思って、とにかくペラペラと捲し立てた。
おかげで、僕への疑いは晴れて、すぐに釈放されたのだが……。
あれから一ヶ月。
まだ桃子は発見されていない。
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