第4話

   

「これは!」

 中に入っていたのは、一体の人形だった。

 あのアンティークショップにあったようなビスクドールだ。

 僕はあの日、桃子ほど熱心に見ていなかったから、これがガラス棚に並んでいた人形の一つなのかどうか、はっきりわからなかった。でも桃子の言っていた『ビスクドール』であることは間違いないだろう。

 ヒラヒラした西洋風の服を着ているけれど、髪の色も目の色も典型的な日本人。その顔立ちが桃子に似ているように見えてしまうのは、さすがに僕の気のせいだろうか。

 そんなことを考えながら、僕が人形を手にしたタイミングで……。

 バタンと大きな音を立てて、アパートのドアが開いた。


「きゃあっ!」

「何者だね、君は?」

 振り返ると、部屋の入り口に立っていたのは、ふっくらとした中年女性と、二人の男性。悲鳴は女性の方で、誰何すいかの声を上げたのは男性の一人だ。

 男は二人とも、ビシッとしたスーツ姿で、僕の方に向かってくる。普通に社会人が着るスーツなのに、でもサラリーマンとは違う、いかにも「只者ではない」という雰囲気を漂わせていた。

   

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る