指差す先に
「小学校の裏山の池には、人を食べる蛇の妖怪がいる」
私が通っていた学校の七不思議の中にこのようなものがあった。
興味本位で友達と裏山に探検に行った時の出来事だ。
池までは一本道の林道で、30分くらい歩くと、池が見えてきた。
その池はとても綺麗で明るく、化け物が出るとは思えない。
水辺の昆虫を観察して遊び、帰ろうとした途端、後方から男の声で呼び止められた。
「こら、お前達何やってるんだ」
振り返るとマウンテンパーカーを羽織り、帽子を被って、登山に行くような格好の男がいた。
担任のW先生だった。
「こんな遅い時間まで何やってるんだ。早く帰れ」
W先生は、帰路を指差して、私たちを帰らせようとした。
しかし、先生が指差したのは、帰る道とは逆方向だ。
これ以上先生に怒られたくなかったため、私たちは何も言わずに私たちが来た道を走って戻った。
学校に着いた私たちは、泥で汚れた長靴を水飲み場で洗った。
その時、職員室の方向から誰かに声をかけられた。
「お前達どこに行ってきたんだ、そんなに長靴汚して」
W先生だった。
さっきまで池にいたはずだ。
私たちはそれなりのスピードで走ってきたため、W先生が追いつけるとは思えない。
しかも、裏山と学校を繋ぐ道は1つだけのはずだ。
先生だけが知っているショートカットがあるとでもいうのか。
「先生、いつの間に私たちに追いついたの」
「え、俺ずっとここにいたぞ」
私たちは絶句した。
もし、池にいたW先生の指差す方向に行っていたら、どうなっていたのだろうか。
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