磨りガラスの向こう側に
地元の国立大学に進学した私は、大学生協で紹介された寮に住むことになった。
その寮は築10年も経っていないこともあり、施設も綺麗で不便を感じたことはなかった。
しかし、気になる点が一つだけある。
部屋は1Kで玄関を開けると、キッチン、風呂、洗濯機置き場があり、もう一つのドアを開けると、リビングに通じる。
リビングに行ったり、外に出るためには、キッチンのある部屋を必ず通らなければならないのだ。
リビングからキッチンへと通じるドアの中心には縦長の磨りガラスの小窓が付いており、玄関には外窓が無いため、昼間でも電気を点けないとキッチンの部屋は暗く見える。
その小窓にたまに人影が映るのだ。
ぼんやりとした輪郭しか見えないが、真っ黒のぼんやりとした大きな人型の影が、肩をかすかに揺らしているのが見える。
それはキッチンのある部屋の電気を点けた瞬間に磨りガラスから見えるため、引っ越した当初は、突然現れたように見え、非常に驚いた。
しかし、ドアを開けるとそのような人影は全くなく、何の実害も無いため、次第に慣れていった。
何かの話のネタになるかと思い、私はその部屋にそのまま住んでいる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます