赤い人形

 友達のHが音信不通になり、学校にも来なくって三日が経った。

 高校ではいつも一緒に行動していたため、Hのことはそれなりに知っているし、理解しているつもりだったのに。

 なんだか、胸の中心に穴が開いたような気持ちになった。


 担任に聞くと、急に体調が悪くなったということだったが、どうしても気になった私は以前遊びに行った記憶を辿りながら、放課後、Hの家に向かった。


 チャイムを鳴らすと、しばらく間を置いてHが玄関の扉から顔を出した。


 「久しぶり、ごめんね、連絡取れなくて。携帯トイレに落としちゃってさ」

 「この頃具合も悪くて、悪いことって重なるもんだね」


 そう言う彼女は、疲労感を顔に出していたものの、いつもの口調で話してくれて安心した。

 連絡を取れなくなっていたのも、携帯の故障でよかった。


 「今、親いないけど、よかったら上がってく?」


 Hはそう言い、私はお言葉に甘えて玄関に入った。


 その瞬間、顔までもが真っ赤な日本人形が玄関を上がった先の廊下にあった。


 「あの人形って何」

 

 恐る恐るHに聞いてみた。

 

 「え、なんのこと?」

 「人形なんてないよ?」

 

 まるでHは人形が見えていないようだった。


 そう言うやり取りをしている間にも、私には人形が見えており、人形に見つめられている気さえして、怖くなった私は、逃げるように帰った。


 その後もHは学校に来ることはなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る