ミケ

 私の実家では昔、三毛猫ではないが、ミケという長毛の猫を飼っていた。

 他の猫と違い、特に悪さをすることもない、行儀の良い猫だった。

 しかし、ある日突然ミケはいなくなった。

 猫を外に出すことに抵抗のない田舎なので、またどこかの家に遊びに行ったのかなとしか思っていなかったが、今回は帰ってくることはなかった。


 大学生になり、私はアパートで一人暮らしをするようになった。

 その日は、深夜まで居酒屋のアルバイトをして、クタクタになりながら帰宅し、テレビを見ながらぼーっとしていると、いつの間にか寝てしまっていた。


 「ナウ・・・ニャア」


 どこかで猫の鳴き声が聞こえた。

 いや、部屋の中にいる気がする。

 なんだか、懐かしい。


 ミケの声だ。


 ハッとして飛び起き、部屋を見回したが、ミケの姿はなかった。


 しかし、なんだか部屋が煙い。

 カーテンを開けてみると、窓がオレンジ色に輝いていた。


 私の部屋の階下で火事が起きていたのだ。


 その時気付いて逃げることが出来たので怪我はなかったが、ミケに助けられたのではないかと、今では思う。

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