防災無線

東京に越してきた今では聞くことはなくなったが、田舎では朝と夕方になると防災無線を使って音楽が流れる。

「エーデルワイス」や「蛍の光」など、季節によってバリエーション様々だ。

朝の放送を聞いて犬が吠えたり、夕方の放送を聞いて小学生が帰路を急ぐ姿は、今思えばノスタルジックだと思う。


私の地元の防災無線には、ある都市伝説が存在する。

夜中になると、稀に女の声が防災無線から聞こえるのだと言う。

全てのスピーカーから流れるのではなく、1つからだけ流れる。

その女の声を聞くと、どこかへ連れて行かれるという噂だ。


夏休み、学生の非行防止のために駐在所の警察官がパトロールをしていた。

2人の警察官のうちの1人が、急にパトカーを停めた。

すると、その警察官は「放送みたいな音が聞こえる」、「女の叫び声がする」と言って、闇の中へ走っていってしまったという。

警察官は行方をくらまし、後日、沼に浮いているのを発見された。

残った警察官は何も聞こえなかったと言うが、亡くなった警察官が走って行った先には、防災無線がポツンと立っていたのだという。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る