第32話 計画

【ここまでのあらすじ:洸一は医療機器メーカーの開発部に勤める35歳。某国スポンサーの再生人間プロジェクトで洸一から複製された人間である陽一は、身体のみならず記憶も人格も洸一の複製。2022年8月下旬から共に練馬区に同居し、互いに高め合っていく。きのうフルマラソンのレースで目標の3時間切りを達成した二人は新たな計画を立て始めた】


2022年12月18日 日曜日


いつもどおり朝4時に起床した二人。昨日のフルマラソンのダメージはあるにはあるが、リカバリーのためにはただ安静にしているよりジョギングがいいので、ひととおり身支度を済ませてから30分ほど暗い中を走ってきた。


まだ5時半だがひどくお腹が空いているので、早めの朝食をとる。二人はめずらしく話し合っている。


「洸一、次に何をやろうか考えていたんだけど、起業してみないか」


「いいね。実は前からいくつかネタは考えていたんだ。人の成長を助けるビジネスっていうテーマでね。ぼくたちの成長経験を活かせるし」


陽一は即座に反応する「それなら、受験アドバイザーはどうかな」


「いいね。設備投資も要らないし、オンラインでできる。でもぼくらが持っている資格じゃないとアドバイスできないな」


「資格なんてぼくらが鍛えた速読力と同時多発リスニング能力があれば大抵の視覚は準備に1週間も要らないよ。2人合わせて半年以内に20個人気資格をとろう」


陽一は自信満々だ。


洸一と陽一はこれまで毎日、如何に脳を活性化するかあらゆることに挑戦してきた。記憶術、ロジカル・シンキング、スピード・リーディング、英語・フランス語・アラビア語・韓国語などの語学、それに数学、心理学、経済学、物理学の専門書も読みこなしすべて身につけてきた。


「おっけー。並行して起業準備も進めよう。初期投資はほとんど要らないけど、20の資格取得となると参考書や受講料、もろもろで200万は見ておいた方がいいけど、貯金で足りるね」


「うん。じゃ具体的に行こう。人気資格って何だろう。英語だったらTOEICとか英検1級、あとは受験者が多いのは宅建とかあるけど」


「ちょっと調査が必要だね。語学系は簡単だけど、いろいろ新しい資格も出てきてるからね」


「起業するからには事業計画も立てないと。まず売上目標だね。チャレンジ目標として、年間売上10億円はいきたいな」


「アドバイザーの時間単価ってピンからキリまであるけど、10億円をぼくらだけで稼ぐとなると1時間100万円でもひとり年間500時間は働かないとだけど、陽一の商社の仕事は大丈夫?副業はOKだったはずだけど時間とれる?」


「1日あたり90分ぐらいだよね。問題ないよ。それに固定費ほとんどかからないし、人気が出て単価が上がればずっと楽になるよ」


1時間100万円とれるアドバイザーやコンサルタントはいるにはいるがきわめてまれな存在だ。しかしどうせやるならそれぐらいの付加価値を出さなければと二人は思っていた。


二人は新たな目標が見えてきて、昨日の目標達成の高揚感もあってか燃えていた。


(つづく)

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