第9話 監視

洸一と陽一は「実験台」なので(モルモットとは言いたくないが・・・)、いつどこでも「監視」されている。


そうはいっても、ハリウッド映画のトゥルーマン・ショー(TVドラマの主人公として生まれたジム・キャリーの生活のすべてが24時間TV中継されている)のような衆人監視ではない。


洸一と陽一には、バイタルセンシングのセンサーが全身至る所に埋め込まれている。


埋め込まれている、というのは正確な表現ではない。市販のウェアラブルは、脈拍や心電、加速度などは標準で計測できるが、彼らが装備しているセンサーは他に血圧や血糖値、筋電など、現在の技術では連続自動計測ができないもしくは困難とされているものまで含まれている。また、彼らの視覚や聴覚も常時モニタリングされている。


人間の身体は、本来センサーだらけである。皮膚などはセンサーでできているといっても過言ではない。


また、生物の身体というものは、自己組織化、自己再生機能を持っている。

いまでいうセンサーはエレクトロニクスの塊であり、計測にも発信にも電力を与える必要があるが、それは彼らが装備しているセンサーからすれば過去の遺物でしかない。まだ人体のそれには及ばないが、生体適合性、電力の自給自足といった点において、最先端の、そして非公開のテクノロジーの粋を集めている。


こう言うとまるでアンドロイドのようだが、できる限り本来の臓器・器官の機能には干渉しないように開発されている。センサーを網羅することによって、そもそも通常の人間からかけ離れたものになってしまっては、プロジェクトのミッションに反するからだ。


洸一も陽一も医学は専門領域でもあり、自分たちの身体がどうなっているかも、そして常時「監視」されていることも承知し納得している。そして、監視されていることを意識せず行動できるよう訓練されている。


そう。普通の人間として暮らせるように。

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