第10話 劣等感
2022年9月6日 火曜日
陽一との共同生活開始から2週間が過ぎた。
洸一には、思春期以来克服できていない劣等感がある。
身長や体重は平均的(なので被験者に選ばれたのだが)で、平均以上の容貌を持っている(イケメンと言われることもなくはない)のだが、そもそも劣等感というのは自分が高めの基準を設定しているから生まれることも多く、平均は意味がない。
負けず嫌いの洸一は、勉強でもスポーツでもとにかくトップクラスにいないと気が済まなかったし、だからこそ努力できたというのもあるが、しかし30代半ばでも少年時代からの劣等感は完全に拭い去れてはいない。
その晩、ひとつ試してみた。ていうか毎日何かしら試しているのだけど。
ソファに並んで座ってビールを飲みながらTVをみていた。
「陽一さー、ぼくの顔どう思う?」
「どうって・・・おなじ顔じゃん」
「最近少し良くなってきたと思わない?」
「んー。毎日見てるからわからないなぁ。あっでも自分の顔を見れば見るほど良くなるって聞いたことあるよ。俳優さんとかさ」
「意識するってことが大事なんじゃない?前だったら朝ひげそるときぐらいしか顔じっくり見ないし」
以前だったらぼんやり自問自答するに過ぎなかったふとした疑問でも、以心伝心の相手と話すと考えがクリアになっていく。
「陽一もイケメンになってきたよ」
「またまた。もしかしてキャラ変えてるな」
二人暮らしが楽しくなってきた。
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