第8話本音と偽り、そして貫く信念

水崎に謝られ、呆気に取られていた私。

震えた声でポツポツと語りだした彼女は今にも泣きそうにくしゃくしゃとした顔になっていた。

そんな彼女の顔を見るのが辛く、彼女の口元に視線が落ち、相槌すら出来ない空気が漂うのを感じ黙って彼女の話しに耳を傾けた。

「私なんかのために心配して駆けつけてくれたんだよね......ありがとう。中学の頃を知ってるようだから話すけど......好かれたくてああやって振る舞ってたんだ。でもさ、いつからか本当の私がどんな風だったか分かんなくなっちゃって......バカだよね。寄ってくるのは外見を気に入った男子やつらばっかりで中身うちがわを気に入らないって奴がほとんどでさ......になっちゃう。自身てめぇを可愛いと自惚れてる女子からは、妬まれ疎まれて嫌われてさぁ。疎外感を感じちゃうともうだんだんと病んでいくんだよ......可愛い可愛いってもて囃されるのも結構大変なんだよ、八奈見さん。高校では波風たたないようにしてたんだけどね、そうそう上手くはいかないもんだね......こんな醜い私と付き合いたいの?八奈見さん」

「......えっ?付き合いたいのって、何でそのことを?」

「聞いたの。小学生の女の子を手当てしてた彼女から、八奈見さんのことを......水崎さんのことがひょっとしたら好きなんじゃないかって、ね。睨んでいたから、とも」

「そう......ですか。私は、そんな水崎さんが好きですっ!外見だけじゃなくて中身だって、水崎さんの鼓動や体温を感じたいって思ってますっ!これだけじゃ、まだ足りませんか?」

彼女に今まで秘めていた想いを一息で言うと、彼女があははっと吹き出した。

「......ごめんっ!だったら......私と付き合う?」

「はっはいぃっ!おっお願、いしますっ!」


彼女が差し出した手を握り、彼女──水崎梨子と付き合うことになった。


その後、彼女と二人で下校している際に男子をビンタした経緯を訊くと、押し付けがましかったからと、その一言で片付けられた。


私は、彼女なりの貫く信念おもいを聞けて、この先も彼女の隣で笑えていたら、と思った。

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