第7話強烈な一発
水崎のキスを目撃して、一ヶ月ほどが経ち、本格的に夏の暑さが到来し、夏休みが近付いてきていた。
休み時間に廊下で談笑する生徒達の姿を見掛けなくなり、エアコンの冷房が効いている教室に群がる生徒を見掛けることが多くなっていた。
期末テストを終え、夏休みのあれやこれやで話がもちきりな教室だ。
部活動のオフがいついつだとか、いついつまでに恋人をつくりデートに行くだとか、といった言わずもがな話題。
午後の授業が終わり、SHRを終えた教室は部活動に所属せずにいる帰宅部の生徒や部活動をサボる生徒が屯している。
居づらい教室をそうそうに出た私は、返却期限が迫っていた図書室の本を抱えながら図書室へと急いだ。
廊下を駆けていた私の耳に何かが破裂したようなパーンッと高く響く破裂音が届いて、思わず足を止めて息をのんだ。
物音の発生元が気になり、周囲を見渡し、耳を澄ましていると中庭の方から僅かに言い争っているような声が聞こえ、中庭側の窓に近付くと一組の男女が言い争う姿があった。
男子が前のめりになって、抗議をしているかのような体勢で女子に捲し立てていた。
男子には見覚えがないが、女子の方は見覚えがあり──水崎梨子だった。
口論の詳細は位置が離れており、分からないが水崎が心配になり、階段へと駆け出して中庭に駆けていく私。
5分も経過せずに中庭に着いたら水崎と口論していた男子と擦れ違い、一足遅かった。擦れ違いざまにチッと舌打ちされたが、それどころではなく彼女に駆け寄り、声を掛けることで精一杯になった。
「大丈夫ですか、水崎さん?あの
「ああぁ、まあ.......あのときの
「良かった、です。はいっいぃ......八奈見、でっ、ぅすっ!」
返事をして名乗ったときに緊張で声が裏返ってしまった。
うぅぅぅっっ......恥ずかしいよぉぅぅ~!
「ごめんね。やな、みさん......」
恥ずかしさのあまり、俯いていた私に彼女が謝ってきたのだった。
「えっ?」
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