第5話彼女との邂逅
自宅を出て、通学路を歩んでいたら聞き覚えのある声が横断歩道の向こうから聞こえてきた。
転んだらしき小学生の低学年女子の膝にハンカチを当てる屈んだ女子高生が目にはいった。
忘れもしない──水崎の唇を奪った女子だった。
へぇー、彼女ってあんな表情をするんだ......と、ふとそんな風に感じて胸の内にモヤモヤとしたナニカがフツフツと浮かぶ。
信号が青へと変わり、横断歩道を渡り始めた私。
横断歩道を渡り終え、彼女達を通りすぎようとした直後に女子高生の彼女に呼び止められた。
「あのっ!昨日、貴女と会ったよね?困ってて、三分も掛からないから助けてくれませんか?」
足をとめ、振り返った私に彼女は片手で頬を掻いて、伏し目がちに返答を待っていた。
「......それなら、まあ」
「あ、りがと......絆創膏ってあるかな?無ければ無いで良いんだけど、えっと......」
「どうだったかな......ああ、あった。はい、どうぞ」
通学鞄を開け、腕を突っ込み絆創膏を探して一分ほどで見つけ、彼女に手渡した。
「ありがとう......もう大丈夫だよぅ、今度は転ばないように気を付けるんだよ」
感謝してから小学生の女子に向き合って、頭を撫でながら優しく声を掛ける女子高生の彼女。
私と彼女に感謝を告げ、手を振ってから歩きだした小学生。
彼女を見送り、女子高生が改めて感謝してきた。
「ありがとう、助かったよ。それで、その......」
「八奈見。二年の八奈見です、じゃあこれで私は──」
「見たん、ですよ......ね?やな──」
足を踏み出すと同時に背後から質問された。
「たまたま通り掛かったってだけだから」
私は振り返らず、返答して歩み始めた。
背後からは足音がせず、車道を走るバイクやトラックが走る音しか聞こえなかった。
高校に到着し、水崎が所属するクラスの教室に足を運んだが、彼女の姿はなかった。
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