第2話確信を得て、付き合っている想像だけで

水崎が空き教室で女子とキスをしていた。拒絶することもなくただ受け入れていた。てっきり周りの──大勢の女子と変わらないかと思っていた。

中学時代の彼女は、男子と付き合っているといった噂話があがることなんて一度だけではなかったくらいだった。

私も手を繋ぎながら男子と下校している彼女を目撃したことがある。男女問わずそういった場面を見掛けたといった話が自然と耳に入ってきたくらいだ。そんな彼女が女子にキスをされて、拒まないだなんて思いもしなかった。

女子との恋愛を受け入れられる存在ひとで安心した。

想いを告げても拒まれることがないと知り、思わず小さくガッツポーズをとっていた。


でも......彼女はあの女子と付き合うのだろうか?

イケナイものを覗き見しているように感じ、いやいや、私にとっては百合成分を補給できている。

相手の女子の声が聞こえ、教室から勢いよく出てきた彼女は壁にもたれ掛かり隠れきれていない私を一瞥して廊下を颯爽と走り去っていく。


5分も経過しないうちに水崎が教室から出てきた。まだ頬が紅潮しており、にやけていた。

私に気付いた彼女は引き締めきれていない顔をこちらに向けたまま紅くぷくっとした唇にひとさし指を当て、内緒ね、といった仕草をして立ち去ろうとする彼女。


「待ってっ!くださ、いっ......水崎さん」

彼女に立ち去られないように、勇気を振り絞り、呼び止めた。

「......何、かな?脅そうって魂胆かな......なら──」

「そうじゃ......なく、て。女子が本命っ......ですか?男子とは──」

「遊び。って言ったら最低でしょ、もともと女子が好きなんだ。しつこいから、付き合ってただけで本気じゃないよ。男子となんて。詰まらないよ、男子とは。ときめきすら感じないからね」

じゃあ、と言って歩きだした彼女。


同類だ、とシンパシー?を感じた私は、高揚してきた感情を早く吐き出したくなった。

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