3話 この街のこと(3)
「な?悪くない人だろ?」
「うん、寧ろカッコいい人だった」
「そういえば会話で気になってたんだけど、今すすきのって危険なの?僕達の行く学校すすきのだよね?大丈夫なのかな」
「すすきのが危険になるのは夜だけだから安心しろ。昼間は裏路地でもない限り危険でも何でも無いぜ」
三春はさらに先程の会話で気になっていた事を質問として久志に聞いていく。
「後さ、杏梨さんが街の中心に限りなく近い人ってどう言う意味だったの?プロギタリストって言ってもなんか変な言い回しだなって思って」
三春の意見もごもっともどあり、わざわざそんな表現をする必要性などありはしない。
久志はそれをわかっていたのかすぐにその質問にも答える。
しかしその回答は些か三春の胸に違和感を残す回答となるのだが。
「
「うん?」
「この街にモブは居ない。これは裏を返せばモブは要らないって言ってる訳だ。モブはこの街の空気に喰われて正真正銘ただの空気に成り下がる。そういう街なんだよこの札幌は」
まるでファンタジー映画の様な言い回しに三春は困惑の色を隠せないでいるが、そんな三春にさらに情報量を増やす言葉を久志は突きつける。
「まあ、この街に踏み込むって言っても踏み込んで良いものと悪いものがある。それについてだけ今教えといてやる。関わったらマズイ奴ってな感じだな」
「そんな人いるの?」
「そうだな、ここら近辺だと
久志は人差し指を立てて例に挙げた人物の説明をしていく。
「札幌に居る最強って呼ばれてるうちの一人だよ。何でも屋をやってて依頼された仕事なら金次第でほぼ何でやる。例えそれが殺しでもな」
「殺し!?フィクションの世界じゃ無いの?」
オーバーなリアクションをする三春に久志の口上は楽しくなったのか脂が乗り始める。
「現実だよ。後、特徴として常に小さい女の子を連れてるんだ。その子に手を出そうもんなら問答無用で殺される」
「ロリコンなの?」
「さぁな、でもこの前札幌駅でその子がお兄ちゃん呼びしてたらしいから兄妹なのかもな。どっちにしろシスコンとブラコンセットなんだけどな」
呆れたように両腕を少し曲げて久志は最後に忠告の言葉を言いながら大通り駅の改札を通過する。
「まあ、これも関わらなきゃ痛い目に遭う事はねえから安心しな」
一旦話を打ち切り二人は地下鉄への階段を
その途中三春はふと久志との会話で生じた疑問を口にした。
「久志君は何でそんなに街の情勢とか、人の事に詳しいの?」
三春の質問に久志は少し考えた素振りを見せた後に
「情報を沢山知ってれば人生は豊かになるからさ。知ってる事が多い方が危険を回避出来るだろ?」
「まあ……確かに。でもどこからその情報を入手してるの?」
これまでの話を聞く限り久志は明らかに知り過ぎていると三春は思った。
そんな個人の情報や薄っすら話していた組織とやらの事も全て把握しているのは大学一年生にしては少し危険に足を突っ込み過ぎなのではと思ったのである。
しかし久志本人はそんな
「そりゃもう……秘密だよ」
× ×
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