第70話  国際自動車競走

「マルメディア王立自動車倶楽部主催の自動車競走を行い、自動車産業の発展及び技術の向上を目指す。その為の自動車競走専用の周回路サーキットを建設しようと思う。大臣、どうだろう?」


「専用の走路ですので、高速での走行に対する法的な問題はないでしょう。技術の発展にも寄与できると思われます。後は、建設費の問題ですが・・・」


通産大臣プリングスハイムが建設費を懸念して、語尾を濁した。


「ああ、王室の私財から供出するつもりだ。国庫に負担はかけない」


「それでしたら問題はありません。通産省が後援できますが、陛下のご希望がおありでしたら、そちらに従います」


「通産省には協賛して貰い、優勝杯の提供をお願いしたい」


「承りました、優勝杯を手配いたします」

さほどの金額負担にはならないので、プリングスハイムは安心したようだ。


「自動車競走の優勝者には、賞金1000ゴルト(1億円)を考えている」


「1000ゴルトですって?!」

高額な優勝賞金に驚いているようだ。


「うむ、この賞金も王室の私財から出す。それと、国際競走にする予定でいる。外国からの出走車輌については、自走以外の搬入でも輸入車扱いにはせず、関税免除をお願いする」


「大蔵省と連携し、そのように取り扱います」


「我が国で、この競走へ参加しようとする者は、どの程度いるだろうか?大臣の考えは?」


「そう・・・陛下の王立マルメディア自動車RMAは、まあ当然ですか。他は、フリードマン商会、ハーマン・クレメント、リンツ発動機LMWも参加してくるでしょう。後は、零細車輌業者バックヤードビルダーの参加ですか。これは数が正直、読めません」

申し訳なさそうに私見を述べた。

「ただ、我が国だけでも十数台程度の参加は見込めるでしょう」


「正式な開催要項が決定次第、諸外国へも通知しよう。このような国際自動車競走は、世界初の試みだ。世界中が注目するであろう」

そりゃそうだ。

大賞典グランプリなのだ!




「おう!おうおう!おどりゃ糞エンリコハインリッヒ!航空機で勝ったちうて、自動車でも勝てる思うちょったら大間違いじゃ!調子に乗りゃあがって!ええ加減にせえよ!」


マルメディアからの第一回大賞典グランプリの開催要項を受け取ったレヴィニア国王フランチェスコ7世は、激昂して書斎内を意味もなく歩き回った。


やれやれ、まるで動物園の檻の中の猿人みたいだな、と侍従長デ・チェーザレスは思った。


「ヴァレーゼの競走いうたらな、取るか取られるかでぇ」


「陛下、いかがなされますか?」


「いかがもタコがもあるかい!参加じゃ!参加してマルメディアの外道共、叩き潰しちゃる!こんなも、そう思うじゃろ?」


いや、同意を求められても困ります。

「国内の自動車会社へ連絡しましょうか?」


「ああ、頼む。剣倶楽部スクーデリア・スパーダも忘れんようにな」




















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