第37話  無敵の人①


——そもそも継母上のユリアーナ公・・・ユリアーナ・ヴィルヘルミナ・アンナ・フォン・マルメディア・ウント・ファン・バルネフェルトはマルティニキアの第二王女だった——


マルティニキアって、王位は男子継承ではなく、長子継承の国でしたっけ。


——そうだな。ユリアーナ公の母は、現マルティニキア王妃アンネリーゼ公、アンネリーゼ・エンマ・マリー・ファン・バルネフェルト・エン・フォン・ミーステク=カルシュタインだ——


はぁ?

カルシュタイン?

それって、つまり・・・


——アンネリーゼ公の生国は、カルシュタインだ。現カルシュタイン公、レオポルト・ハンス・アウグスト・ルドルフ・フォン・ミーステク=カルシュタインとは叔母・甥の関係になる——


ちょっと、何だ、それは!

現カルシュタイン公と継母君であらせられちゃってる先王妃ユリアーナ公は従兄妹同士って、えええっ?!


——それが分かっていて、後妻にユリアーナ公を選んだ我が父カール公がどんな人物か、想像してみてくれ——


はぁ、馬鹿なんですかね?

馬鹿でしょ。

いや、馬鹿に決まってます。


——ノイスブルク大司教エルメンドルフは、カール公、フランツ公の家庭教師を務めていた。当時は大司教ではなかったのだが、まぁそれはともかく、大司教はヘルネ修道院で「何故、主はフランツ公を弟君とされ、生を授けたのだ?」と号泣したそうだ——


はぁ・・・ダメだ、こりゃあ!


でも、ようし、次行ってみよう!とはならないな。


——?——


あ、こちらの話です。

大司教が家庭教師していた、と。


——大司教の評価は、カール公は馬鹿。フランツ公は秀才。私は凡才。弟のアドルフは馬鹿の無差別級王者。フリードリヒも凡才。テレーザは馬鹿の女帝、だ——


いやあ、人物評価の厳しい方ですね。ノイスブルク大司教は。


——教皇猊下に対しても、だからな。猊下に『あんたなぁ、白いベベ着とるゆうて偉そうにしてますがな、ほんなら、うっとこの修道院で飼うてる犬のアントニウスも白いんや。うち来てアントニウスの前脚に接吻したってや」と言ったとか何とか、そんな伝説と言うのか神話と言うのか、まあ、それがある人だ——


マジですか?

普通、破門でしょ、それは!


——爺様、もう怖いもの無しだからな。何年か前のネアルカス公会議で「魔法を異端言うけど、神さんが使え言うて、授けて下さった力やで。そんなん使わなんだら、神さんへの不作為や。そこんとこ、どない思うてますのん」ってブチかましたら、居並ぶ枢機卿が全員黙ってしまったって噂だ——


・・・


——『神父がやらはったら奇跡で、婆さんがやらはったら魔法とか、おかしいで。どこが違うか、言うてみい』って、ネアルカス大学の教授に喧嘩売って論破したのは、私も生で見たことがある——


・・・大司教、結構な訛りがあるんですね?


——ああ、興奮してくると出るようだ。弁が立つからといって、詐術で人を言い包めるな!ってヤジられたら、突然訛り丸出しで『阿呆言いなんな、枢機卿。ワシのウンコは立つほど硬くないわ。ほんでな、聖教会で説教やっとるモンが弁立たんで、どないしますの?だあれも話、聞きに来んようになってもええんでっか?弁の立たん奴ぁ、うっとこの修道院で雑巾がけからやり直しや。なぁ、枢機卿』と語っt——


ノイスブルク大司教は、無敵の人だったのか!















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