第36話  計画

マルメディア 首都ノイスブルク 王宮 国王執務室



「それでは陸軍の10万人増員に、10年必要になると」


10万人徴兵して、師団を10個配備しようとしたが、現状無理だと陸軍から報告を受けた。


その説明に、陸軍軍務局局長が来ている。


「師団本部の教育隊で新兵訓練を行います。この訓練は基礎訓練3ヶ月、個別訓練3ヶ月の6ヶ月が必要です。また、教育隊の規模を考慮しますと、1期の訓練は100人が上限となります」


「現有50個師団だと、新兵訓練は年間1万人が上限になるのか」


ゲームのように、徴兵即戦力増とはならないのだ。


「この10年間には自然退役も発生しますので、10万人増員には更に時間が必要となります」


退職者も出る、か。


「行く行くは陸軍90個師団の編成を目指したいのだが、実現の為にはどうするべきだろうか?軍務局局長の意見は?」


四方を非友好国に囲まれて、数年前には北と西から侵略を受け国土を大幅に失っている。


東は落ちつきそうだが、軍拡は最優先の課題だ。


「1000人規模で訓練可能な施設を数カ所、仮に5ヶ所建設すると、現状の1万人に合わせて更にもう1万人の増員が可能となります」


次の年度は、52個師団で10400人プラス1万人。


その次は54個師団で10800人プラス1万人。


更に56個師団で…


足りない。


圧倒的に足りない。


ナチスは一般兵士に下士官教育を施して、新規徴兵者を軍に組み込んだ際に一気に部隊増が可能となるようにしていたが、新兵教育はどうやっていたんだ?


訓練期間短縮と訓練施設設置で、短期間で軍の編成をするしかない。


「訓練期間の短縮は可能であろうか?」


「検討いたします」


「90個師団が編成できれば、我が国も軍事面で一息つけると思うのだが」


「陛下、現状の平時編成ですと1個師団当たりの定数は1万…本来なら3個連隊12000人なのですが、戦時編成を行いますと1個師団は4個連隊16000人となります。更に人員が必要となり、この人員の宿舎等必y」


ああ、軍事は政治に隷属し、政治は経済に隷属す。


即ち、軍事は経済に隷属す、か。


金が無いと戦争に勝てないってことだ。


戦争は数だ。


戦術の妙技も戦場の美学も、数の暴力の前には存在し得ない。


「説明に感謝する。訓練施設15ヶ所の建設に取り掛かってくれたまえ。必要な予算は、補正予算を組んで捻出する」


「15ヶ所、ですね。早速、手配いたします」


敬礼をして、軍務局局長が去って行った。


新兵訓練期間を4ヶ月に短縮できれば、訓練施設15ヶ所だけで年間45000人の兵士を軍に編成できる。


師団本部での訓練兵が15000人。


合わせて年間6万人だ。


これなら何とかなる。


いや、何とかしなければ。


空軍創設を考えると更に人員が必要だが、初飛行が済んだばかりの航空機では実戦投入は不可能だ。


航空機の発達を待ってから、空軍いや陸軍航空隊の編成だ。


『空軍』なんて名前にすると、陸軍の反発が大きいだろうな。


しかし、何でこんな細かいことを気に病まねばならないのだろう?
















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