第23話 雑談
マルメディア 首都ノイスブルク 王宮 大会議室
新型のフィールドグレーのオーバーコートを着用した参謀総長と随官が姿を見せた。
「陛下をお待たせし、大変申し「ああ、かまわん。まだ時間前だ」訳な…」
今回のような国王臨席の会議の場合は、出席者が全員揃ってから国王が姿を見せるのが通例らしいが、知ったことか。
勿体ぶって会議の参加者を長時間待たせて、そんなことで威厳を見せてマウンティングすることに何の意味があるのか?
「フォン・クリューガー参謀総長、新型制服の感想は?」
参謀総長は、将官用コートのブライトレッドの下襟裏側を見せつけるように開襟して着用している。
「この
随官は開襟せずにダークグリーンの襟をしっかり留めていたが、参謀総長の話の後で襟を立てて顔半分を覆って見せた。
ま、第二次大戦中のドイツ国防軍の制服を、そのままマルメディア陸軍の新型制服として採用しただけなのだが。
「野戦服はどうかな?」
「冬季だと暗灰色の新型野戦服は目立ちますが、防寒を兼ねた迷彩服を着用すれば問題なしと本職は愚考いたします」
まあ、そうなるな。
アフリカへ軍を派遣する必要はないから防暑服は必要ないし、あとは防寒服があれば足りる筈だ。
さすがにNBC戦用の防御服は必要ないだろう。
「発言をお許しください」
と参謀総長の随官が言った。
「中尉、発言を許可する」
随官の肩章を見てから、そう返した。
会議前の雑談なのに、何と面倒な!
「この
塹壕足対策でもあるから、ブーツを採用したのだ。
簡単に靴中が濡れるゲートル巻きなど論外だ。
「しかし、靴裏側に数多く打ってある
ん?
「続けたまえ」
「鉄鋲は熱伝導が高いので、冬季には冷気を靴裏側から足へ伝えることになります。それにより、凍傷を招く怖れがあります」
「…中尉、貴重な意見、感謝する。ああ、それと参謀総長」
と参謀総長に声をかける。
「冬季演習で野戦長靴の耐寒試験、評価を行います」
フォン・クリューガーが、そのように返してきた。
さすがだ。こちらの言いたい事柄を理解している。
「拙速で採用決定したので、耐寒試験は行っていなかった。改善すべき点は、しっかりと改善しなければならない」
雑談からは有用なことを得られる。
決して無駄な時間ではないのだ。
無駄になるのであれば、それは雑談に加わっている人間の見識が低いからだ。
「中尉。君の名は?」
「カール・フォン・ゴットベルク中尉であります」
ゴットベルク?
どこかで聞いたような…
「西部方面軍司令官ヨーゼフ・フォン・ゴットベルク大将閣下の次男です」
参謀総長が補足してくれる。
「そうであったか。フォン・ゴットベルク大将は、良い後継者に恵まれているな。さて、時間だ。会議を始めようか」
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