第22話  アビエーション

マルメディア 首都ノイスブルク 王宮 朝食の間



「初飛行に成功したのは、間違いないのか?」


朝食後の紅茶を噴き出しそうになった。


航空機の初飛行だと?


これは驚いた。


発動機・航空機開発に予算を配分するようにはしたが、それは次年度からの話だった。


企業や大学の研究室には今年度の予算では僅かな額しか支給されていなかったので、国王のポケットマネーから結構な金額を寄付して研究開発を進めるようにはしていたのだが…


「詳細はこちらに」


侍従が書類を渡してきた。


…分からん。この国の文字は、まだ理解できない。


私の中にいる陛下に『通訳』をお願いする。


書類には、シュパンダウ工科大学の航空機研究開発チームの航空機が、昨日午後、ヴェルスフルト州グロックナー郊外の牧草地で20分間の飛行に成功した、とあった。


まだ報道はされていない。


書類には、飛行の状況、航空機の写真、飛行中の写真及び諸元が記入されていた。


エンジンは、フリードマン商会の自動車部門の試作品を使用。


水冷直列6気筒、元の世界の表現だと排気量6000ccで40HPになる。


全長7m、全福13m、全高2.6m、離陸重量380kg、時速120km、


写真を見ると複葉機で、プロペラが2翅の牽引式。


着座型の操縦席で固定脚も付いている。


単なる浮揚ではなく、上昇、旋回、下降も行い20分という飛行時間を記録した偉業だ。


しかし、何故この偉業を発表しないのか?


——この航空機が発展して兵器として使用されるなら、今回の初飛行は軍事機密に属する可能性大である、と書類にはあるな——


公表するかどうか、判断を国に任せるということか。


もちろん、公表する。


開発研究者達の偉業を称えないで、どうするのだ。


書類の最後には、「図面や模型での研究を行ってはいたが、実機製作は予算の制約があり断念していた。この度、陛下の篤志を賜り航空機の実機製作、初飛行への成功の途が開けた。この航空機は21号機と部内では呼称されているが、可能であれば、この21号機へ陛下より御名を賜りたい。国王陛下万歳」とシュパンダウ工科大学のウォルフ教授のメッセージが添付されていた。


現地で書いたのだろうか、ノートを破ったページに書かれている。


「侍従、大学へ発表を許可と連絡」


「仰せの通り」


「関係諸氏を謁見して、労いの言葉をかけねばなるまい。日程の調整を頼む。侍従長にも連絡してくれ」


一礼して侍従が『朝食の間』から立ち去る。


しかし、予算不足で航空機の実機実験や製作が出来なかったとは・・・


朝食を取るだけの『朝食の間』を維持する無駄な金があるというのに、どうなっているのだ。


他の分野でも、予算不足で発展が阻害されているかもしれない。


予算の要求や編成に問題がありそうだが…


陛下、この国の予算編成は少々間違っているのでは?


いや、待てよ。


この前会った蔵相が、一般会計6000万とか言ってましたよね。


他に予算会計があるのですか?


——…ある。特別会計だ——


へ?


何?


何ですか、それ?


聞いてませんよ!


——いや、特に質問をされなかったのでな——


歯切れが悪くなる。


財源は?


——主に鉱物輸出関連の利益、国営企業からの国庫納付金、行政各団体の収入、大蔵省の資金運用部からだな——


金額は?


——約1000億ゴルト弱だな…——


はぁ?


10兆円?


そんなに金があるのに、肝心な所に予算が回らないとか、一体どうなっているのだ?


——行政活動が多岐にわたると、単年での事業状況の判断が困難になってくる。それで特別会計を組んでいるのだが…——


忌々し気にそう返された。


ブラックボックスになって、何処かへ消えてしまっているのか。


やれやれ、どこかの国と一緒かよ。


改革をするには、どこから手をつけたものやら…































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