第17話  召喚と枢機卿①

マルメディア 首都ノイスブルク 宮内省病院



軍用拳銃を、リボルバーからオートマティックに変更することにした。


コルトM1911A1を9ミリパラベラム弾仕様にしたような銃だ。


ダブルカアラムにして、装弾数13発プラス薬室に1発。


接近してスコップでの殴り合いになっても、14発撃てるサイドアームは有効だろう。


この世界に、19ラム×40弾という9ミリルガーに酷似した弾丸があったので、これを使った拳銃と、同じ弾丸を使用するサブマシンガン…生産性を重視して、M3A1の概略を説明する。


「鋼板を塑性加工プレスして、機関部レシーバーを作成ですって?」


ローヌメタルの技術者達がM3A1の構造に驚いている。


「ああ、作動部ボルトさえしっかりしていれば、機関部は溶接で貼り合わせた鋼板でも問題あるまい」


「これは非常に画期的な構造の機関銃になります。このような製造のやり方を、陛下はどうやって発想されているのですか?」


と呆れるのか、驚いているのか、どちらとも取れる質問を受けた。


「戦争とは、数である。簡素な構造、工程で安価かつ大量に生産できる銃で、数を揃えることが必要である。それだけだ」


とりあえず、軍警察と砲兵、補給部隊の自衛火器として採用すれば、性能の高さから前線でも使用するようになるだろう。


「かなり軽量な銃になります。回転数を上げると、全自動射撃時フルオートの命中精度に影響しますが」


トンプソンM1みたいに重量があればフルオート射撃時のコントロールも楽だろうが、そもそも重いサブマシンガンって何だ?って話になる。


「回転数を抑えるのは構わない。有効射程も300リーグ(150メートル)程度だから、固定照準器オープンサイトで十分だ」


「しかし、この木製ではない、金属棒を加工した銃床ストック排莢口エジェクションポートの覆いを兼ねた、安全装置セーフティー。驚く他、ありません」


「では諸君。自動拳銃と短機関銃の開発を命ずる。一刻でも早く、試作品を完成させてもらいたい」


ローヌメタルの技術者達が病室を出て行くと、入れ替わりに別の面会人が現れた。


「枢機卿がお見えです」


引きつった表情で、看護師のエリーゼが伝えてくれる。


「御意を得ます、陛下」


と一礼して、枢機卿の青色の聖職姿の人物が病室へ入ってくる。


——タグリアーニ枢機卿だよ。50代だが、次期教皇候補の一人だ——


これは超大物の登場ですか。


この流れだと、明後日辺りには神様御本人が面会に来られるかもしれませんな。


「回復が医師の診断よりも早く、来週には退院できそうです」


「主が早めの退院をお望みになられたのでしょう。喜ばしいことです」


退院したら、陛下の決裁待ちの書類が山積みになっているのでは?


この前面会に来たフランツ公も、摂政の立場では決裁出来ない書類が多過ぎる、と嘆いてました。


——そうだな、御璽押印は誰にでも出来るし、このままフランツ叔父上の摂政を継続して、国務の補助とするのも良いかもしれないな——


「さて、以前に話をした『召喚』の件ですが・・・」


召喚?


それ、何で私がここにいるのかって話じゃないの!


「そのような話をした記憶もあるな」


「召喚の儀法を執り行いましたが、失敗しました」


失敗?


だって、私はここにいるじゃん!


——失敗したなら、何故君が私の身体に憑依しているのだ?——


「記録されていた古来の儀法に従い召喚を行なっていましたが、召喚者の肉体が具現化する寸前に消失してしまったのです。私もその現場にいて、目撃しました」


はあ?


肉体が消失?


私は死んだのか?





















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