第14話  必要となるもの

マルメディア 首都ノイスブルク 宮内省病院



陸軍部隊で単位時間の弾丸投射量を上げると、今度は輜重段列の問題だな。


補給だ。


大量の弾薬を消費する部隊へ、素早く補給を行える態勢作りが必要だ。


正面装備だけではなく、後方で戦闘部隊の支援を行う部隊の装備も何とかしなくては。


輸送トラックが大量に必要になるな、これはGMCのCCKW一択だ。


四輪もウィリスMB、これしかない。


二輪は…

BMW R75にしよう、うん。


バンクさせて高速でコーナーを攻める必要ないんだから、エンジンが水平対抗でも問題ない。


車両だけではないか、大量の車両導入で燃料の補給も、いや、人間の補給、戦闘糧食レーションも考えないと。


無線機も必要だ。


…骨折で入院しているが、X線写真は一度も撮ってないな。


するとレントゲンの発見以前の時代か?


いや、おかしい。


ガソリン燃料の自動車は開発されているのだから、1900年?より少し前の世界か?


この異世界は、少し世界線がズレているのかもしれない。


予算をつけて工科大学を増設して、内燃機関の研究だ。


ディーゼルもだが、まずは各研究機関とも協力して、航空機用のガソリンエンジンの開発を進めないと。


飛行機の初飛行は未だのようだが、ライト兄弟もエンジンで苦労していたな。


行く行くは航空軍の設立だが、とにかく人材と予算と時間が…


ゲームのように、予算を割り振るとボコっとT型フォードの2.9リッター直4エンジンが出来たりすると楽なんだが。


道路の舗装、拡幅もやらなくては。


自動車の時代は、もう直ぐやって来る。


未舗装の悪路、狭い道ではどうにもならない。


砂糖代わりにハチミツを入れた濃い目のコーヒーを飲みながら、取り留めのない色々がことが頭をよぎる。


——加藤、少し話をしたいのだが——


どうぞ、陛下。


——私の意思とは無関係に、君は私の身体を動かすことも発言することもできる——


そうです。


——私の『助言』も無視できる——


まあ、出来なくはないでしょうね。


——現在、我が国は困難な状況下にある。もちろん『国王』である君も、だ——


そうかもしれません。


ま、月末の終業時間前に、いきなり今日中に必要な書類with各部署の担当者&責任者のハンコが必要な書類が回ってきた時よりは、マシかもしれないか。


——?…ま、いいか。今は入院中だが、君は外出して王立銀行の口座から王家の預金を大量に引き出して、責任を放り出し、何処かの国へ亡命することも出来る——


おおっ!陛下、それは素晴らしい!


そんな選択肢が私にあったとは、想像すら出来ませんでした!


ご教示、ありがとうございます!


——何故、そうしないのだね?——


それをすると、大勢の刺客の皆さんが漏れ無くついてくるでしょうな。


——新大陸の荒野の片隅でひっそりと暮らすなら、その心配もないだろう——


それで、死ぬまで残りの人生を息を潜めて暮らすと。


しかも内なる声に色々と言われながら、ですか。


——その方が楽だと考えたりはしないのかね?——


そうですね、そちらの方が楽かもしれません。


ただ、そうすると、私は私自身を赦せなくなるでしょう。


——……——


これでも私の内なる神は、なかなか厳しいお方なのです、陛下。


——そうなのだな、今の私には君の協力に対して『ありがとう』と言うことしかできない。本当に申し訳なく思う——


何、それで十分ですよ。


で、話は変わるのですが・・・


——何かな?——


マルメディアのどこかに、火炎魔法を使って一撃で敵軍団を粉砕できるような、そんな強力な戦闘魔導師はいたりしませんか?


——…あ〜、存在しているとは聞いたことがないな——


ま、そんなものだろう。


ロッキー4のサントラ、No Easy Way Outが何故か頭の中で流れていたような気がした。





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