第13話 迫撃砲
マルメディア 首都ノイスブルク 宮内省病院
病室内へ、王立兵器工廠、ジーゲン重工、アンハルト製鋼の火砲設計製造に携わる3人の技師達を集めて、新型火砲の簡単な説明を行う。
どう考えても一国の国王が新型兵器開発の為のレジュメをするのは変だが、この新型兵器「迫撃砲」のことを分かっているのが私だけなのだ。仕方ない。
「この新型曲射砲に必要な性能だが・・・」
技師達は、手元の書類にある迫撃砲の簡単なイラストと、必要諸元を見ながら説明を聞いている。
「一、砲口装填式であること。
二、射撃時の反動は、底盤を通して地面に吸収させるので、駐退機は不要。
三、底盤、砲身、支持架に分解でき、歩兵の運搬が可能であること。
四、砲身は滑腔砲であること。
五、砲尾と底盤の結合部を中心にして、砲が旋回できること。
六、発射は落発式によること。
七、砲弾は弾体と発射薬が一体化されていること。
八、最大射程5000リーグ(5000メートル)程度。
九、価格は8万ゴルト以下」
「よろしいでしょうか」
アンハルト製鋼の技師が発言を求める。
「申せ」
「相当に湾曲した曲射弾道の火砲を求めている、という解釈で間違いありませんか?」
「然り」
「砲の口径の指定がありませんが…」
王立兵器工廠の技師だ。
「特に指定はないが、要求諸元に基づき開発を行えば、100乃至200ラム(50〜100ミリ)程度の口径になるのではないか」
「性能諸元に優先順位はありますか?」
ジーゲン重工の技師から質問が出る。
「弾体と発射薬が一体。これは必須だ。次に分解して運搬可能、最大射程5000リーグ。これだけだ」
全員が書類に何事かを書き込んでいる。
「2ヶ月後に審査を行う。単独開発でも共同開発でも構わない。2ヶ月後までに試作品を3門、砲弾200発を製造して頂きたい」
3人とも黙り込んでしまった。
「以上だ」
不可能なのか?
自衛隊でも使っているL16と迫撃弾体のイラストまでつけてあるのに、出来ませんとか、それはないだろう?
「陛下、只今この3名で検討いたしますので、少々お時間をいただけないでしょうか?」
「任せる」
3人の技師は病室の片隅で「射程を取るには砲口初速が」「軽くすると、砲身強度に」「滑腔砲なら、精密加工」等と会話をしていたが、話が纏まったようだ。
「陛下、お待たせしました。この新型火砲は構造が単純ですので、2ヶ月以内の開発は可能です」
「結構」
「ただ、弾体と発射薬が一体の砲弾は、これまでに類を見ない物なので、開発に時間が必要かもしれません」
「諸君なら2ヶ月以内に開発できる、と私は信じている」
——なるほど、こういった形の激励があるのか——
陛下、何事も言い方一つです。
「はっ、粉骨砕身して開発に努めます!」
「頼む。敵はいつまでも待ってくれる訳ではないのだ」
技師達は一礼してから、病室を出て行った。
迫撃砲の開発は、何とかなりそうだ。
軍隊の数的劣性を補うには、やはり単位時間当たりの弾丸投射量を上げるしかない。
迫撃砲の次は、軽機と重機だ。
MG42とブローニングM2をモノにして…
それからバトルライフル、AK47だ。
あれ?AK47を採用するなら、軽機はRPKの方が良くないか?
まあ、とにかく軽機と重機を揃える方向で行くか。
——加藤、君が何を考えているのか、私には全く分からない——
陛下、将来「ハインリッヒの電動のこぎり」と呼ばれるようになる銃についてです。
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