第7話 現状②
「…国王不在が10日にも満たない中で、劇的に何かが変化するとも思えないが、他に何か知っておくべきことはあるかな?」
「そうですな…公式には陛下は面会謝絶となっておりますが、面会を求めて来院された方々が、レーマン宰相、フォン・クライスト陸軍相、フランツ公、ラインハルト公、ノイスブルク大司教、あと不肖私、ですか」
「妃のソフィアは姿を見せず、か」
陛下、結婚されてたのですか?
——家庭は崩壊しているようだがね——
家族が面会に来ないとか、一体どうなっているんですか?
——色々とあるのだよ。まぁ、王族から重症の国王への面会を希望した者が2名もいたことを、私は喜ぶべきなのだろうな——
「大司教は、何か?臨終の秘蹟でも行うための来院だったのか?」
「いいえ、大司教は回復の儀を行いたい、と日参しております。時間は大体午後2時頃です」
「ふむ、会ってみたい。手配を頼む」
「御意」
国王なんて、美人の妃がいて、美味い料理を食べて美味しい酒を飲んで、大臣が持ってきた書類に適当にサインして『うむ、よきに計らえ』で済むような気楽な稼業かと思ったが、どうやらそうではなかったようだ。
——そうであったなら、どれだけ楽なことか——
「それと・・・あのエリーゼ嬢は、何者なんだ?わざわざ私の看護を担当する以上、普通の看護師ではないと思うが」
ふと思った疑問を口にしてみた。
「ノイマン看護師ですか、元々はカリンハル貴族フォン・ノイマン伯爵家の嫡流で、カルシュタイン独立戦争の際に王国側へついて武運拙く破れ領土を失ってしまい、爵位とフォンの名を返上した経緯があります」
世が世なら伯爵令嬢だったのか!
——先祖が至らない故、皆に苦労をかけてしまっているな——
「陛下の入院に当たり、医師や看護師の身辺調査を行い、問題のない人物を配しております」
「当直医の名前は、たしかフォン・マッケンゼンと言ったが…」
「カリンハル貴族、フォン・マッケンゼン侯爵家の一族です。フォン・マッケンゼン医師は分家筋の男爵家でしたが、フォン・マッケンゼン一族も王国側に立って戦い、領地を失ってしまいました」
…逆に恨まれたりしないのか?お前の先祖がもう少し戦が強ければ、って。
領地と貴族号を失ったのは、お前の先祖のせいだってならないか?
——そのような見方もできるが、調査した結果、問題のない人物を配してくれているのだ。負けてはしまったが、一般的には、あの戦争の正義は王国側にあった、との評価になっている——
戦争の正義がこちら側にあったとしても、負けてしまってはどうしようもないでしょう。
——ああ、君の言う通りだ——
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