第2話 ある日常の点描②
コーヒービーンズショップを出て、最寄りの地下鉄駅へ向かう。
自宅に帰ったら、焙煎前にピッキングをして、それから七輪の炭火で焙煎だ。
ダイソーの金属製のザルを組み合わせた『簡易焙煎器』に生豆を入れて、気長に七輪の上で豆を加熱する。
炭火の遠赤外線効果で、豆の中までしっかり焙煎された仕上がりとなる。
炭火焙煎は微妙な火力のコントロールができない、と否定する人もいるが、炭火と焙煎中の豆に間隔を取れるなら火力のコントロールはできる。
人力でやっているので、豆が爆ぜたら七輪と距離を置く。
これで火力のコントロールは問題ない。
…時間はかかるが、まあ道楽だから苦にはならない。
2杯分の焙煎にどれだけの時間がかかるのか、その前の不良豆のピッキングと合わせても2時間あれば充分な筈だ。
今日はこのルビーマウンテンで、とりあえず1杯楽しんで、残りのもう1杯分でブラックブッシュ…いや、ティーリングを使ったアイリッシュコーヒーを作るか。
美味くない訳がない、最高のアイリッシュコーヒーになるだろう。
地下鉄駅への階段を降りて地下通路を歩きながら、色々と想像して、思わずニヤけてしまう。
いつもはジェムソンで作っているアイリッシュコーヒーだが、たまには贅沢してティーリングを使って、バーでオーダーしたら1杯2500円はしそうな、そんな贅沢なアイリッシュコーヒーを堪能しよう、うん。
クリームはあった筈だけど、途中でスーパーに寄っ…
ん?
あれ?
地下通路がガス臭いな、何でだ?
ガス漏れ?
地下通路のような密閉された空間だと、かなり深刻な事態を招きかねない。
とにかく早く地下から地上へ逃げないと!
駅の改札方向へ背を向けて走りだす。
一番近い出口は…
走りながら必死に出口を探す。
あった。
地上への出口だ!
あの出口から地上へ脱…
その直後。
後方から爆発音がして地下通路の照明が消えた。
そして猛烈な勢いの風に身体を持っていかれて、何かに叩きつけられた。
そこで意識が途絶えた。
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