第13話 小学生時代

これは私、神田由子が、

小学生だったの頃のお話。


当時は個の概念が薄い時代で、

周りに合わせる事が正しい。

そうやって教えられて来た。


だから感情なんてものは必要ない。

他の人とすれ違いが生まれて、

悲しくなってしまうだけ。


大人たちに怒られても、

感情がなければ悲しくないし、

多くの人に合わせる事が出来た。


「だからわたしに、

 感情なんて要らないんだ。」


当時の私は本気でそう思って、

誰の意見も聞かずに塞ぎ込んだ。


私はその時多くの感情を殺した。

「悲しい、つらい、泣きたい。」

そんな感情のついでに、

「楽しい、嬉しい、幸せだ。」

そんな感情も消えていった。


「わたしが周りに合わせれば、

 周りの人は喜ぶし、

 わたしには感情がないから、

 悲しくなったりしない。」


だけど…。


「わたし、なんで生きてるんだろう。

 周りの人を喜ばせるための、

 重要な"ぽじしょん"。

 だけどいつからかそれすらも、

 大切だとは思わなくなった。」


だって私には、

感情がなくなっていたから。


親の言う事に合わせて受けた、

桜蔭中学の中学受験。


私は何なく合格したけど、

特に嬉しいとも感じなかった。


私の目的は、周りを喜ばせる事。

だから私は嬉しくなくてもいい。


「でも、思い描いたのは、

 喜ぶみんなに囲まれる、

 わたしの笑顔だった。」


みんなと正直に語り合えて、

冗談を言って笑い合える、

そんな自分に、心の中で出会った。


私の数ある感情の中でも、

その感情だけは大切に、

心の中にしまっておいた。


他の感情に失礼だよね。

一人だけ殺さず、生き残らせた。


でも、蘇らせたよ。

その夢を叶えるには、

君たち感情の力が必要だったから。

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