第12話 ゾンビハザード

「その小学生が相手か。

 私も舐められた物だな。」


ヴァンパイアは神音を見て、

残念そうにそんなことを言った。


「まぁいい、かかって来なさい。

 私が相手してあげましょう。」


すると神音は、

ヴァンパイアに向かって歩き出す。


「ごめんねおじさん、

 それはできないや。」


「なぜなら…。」


「君はもう死んでいるから。」


神音がヴァンパイアとすれ違った瞬間

ヴァンパイアは崩れ落ちた。


「大地さん、今の攻撃見えたか?」


「攻撃が見えなかったと言うより、

 攻撃をしてなかった様にも見える。

 神音は呪剣を鞘から出してない。」


「わたしの最初の能力は"時制"。

 "過去形"は、その対象に、

 過去に攻撃があったと言う、

 事実を作り出す事が出来る。」


「わたしのワンパンの範囲内なら、

 わたし、無敵だから。」


フロアボスを倒したけど、

階段が現れた様子はない。


「ヴァンパイアのやつ、

 フロアボスじゃ無かったのか?」


「いや、大体正解。あれみて。」


ヴァンパイアを倒した奥から、

大量の魔物が押し寄せて来る。


ゾンビ、マミー、スケルトン、

それはこの階層で見た者たちだった。


「どうやらヴァンパイアの死亡が、

 ボス出現の条件だったみたいね。」


辺りの様子を探る為に、

私は数学の能力を解放した。


「解の公式発動…。

 フロアボスXの数は1人重解

 種族はスケルトン。」


「全てのスケルトンを連立して解く。

 フロアボスのスケルトンは、

 10時の方向に居る…。」


「あれだな!」


大地さんはフロアボスの所に、

一瞬で近付いて敵を倒した。


だけど階段は出ないし、

敵の攻撃も止まらない。


「解の公式発動…。

 フロアボスXの数は1人重解

 種族はマミー。」


「全てのマミーを連立して解く。

 フロアボスのマミーは、

 1時の方向に居る…。」


「これは…!?」


「間違いないね、

 フロアボスは入れ替わってる。

 恐らくフロアボスを倒すときに、

 ボスの権限が移行されるんだ。」


「つまり…!?」


「この今見える敵全体が、

 今回のフロアボスだ。」


魔物の軍隊は地平線まで続いていて、

それを全員"同時に"倒す事は、

困難を極める気がした。


「2人とも構えて、

 大きい攻撃が来るよ!

 "未来形"で先送りにしたから、

 攻撃が来るのは5秒後!!」


「ありがとう神音、

 タイミングが分かってるなら、

 この技が使える!絶対値!」


攻撃が飛んで来た瞬間、

二つの棒が私達を挟んだ。


私達のHPは、

今ので負の数になったが、

絶対値は負の数を正の数に戻した。


「まったく、

 どっちがゾンビなんだか。」


その間に、私は連立不等式を使い、

敵の共通範囲を割り出していた。


「やっぱ簡単には見つからないか…。

 大地さん、端数を省いてくれない?

 ほら、あいつとあいつ!」


「了解!」


大地さんは言うより早く、

端数となる的を消滅させた。


「これで敵は半径5kmに収まった!

 神音、でかい技をいっちゃって!」


「もともとこいつらは、

 わたしに恨みがあるみたいだしね、

 最後はわたしが決めるよ!」


「君たちは"現在時制"では、

 本来死んでいるはずの魔物。

 自分達があるべき姿に戻りな!

 "時制の一致"!!!」


神音を中心に球状の光が発生して、

半径5kmを包み込んだ。


ゾンビたちは浄化された様に、

次々と消滅して行く。


「現・在・完・了!(ドヤァ!」


最後の一匹が消滅した時、

神音はドヤ顔でそう言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る