第9話 神奈
目を覚ますと、そこは塔の前だった。
大地さんは生きていた。
私も生きている。
これも結界の効果なのか、
塔の中で全滅したら、
塔の前に戻されるらしい。
草原からやり直しになるが、
とりあえずは安心出来るだろう。
「街の様子でも見て行くか!
後でここに合流な!」
大地さんはそう言って、
ボロボロの街に向かっていった。
街の復興は思ったよりも早く、
小さな商店街が出来ていた。
私は仮設シャワーで泥を流し、
商店街へと向かった。
「服屋とかあれば良いんだけど…。」
私は泥だらけのセーラー服を、
一刻も早く着替えたい。
服屋があれば、セーラー服を着る理由
(大義名分)が無くなってしまうが…。
違う!着なくても済む様になるが…。
歩いて行くと防具屋を見つけた。
「防具か…。まぁ、布の服とか…。」
防具屋に入る。
店内には防具が飾られていて…って、
防具屋ってどこもこんな感じだよな。
「よお、ねーちゃん、初めてかい?
今日のオススメはビキニアーマ…」
「布の服で。」
「あいよ、布の服だな!」
店主が倉庫から引っ張って来たのは、
あろうことかセーラー服だった!
「おっちゃん…!」
私は声を高々に叫んだ。
「ナイス!!!!」
セーラー服(大義名分)を手にした私は
意気揚々と防具屋を出た。
待ち合わせ場所には、
既に大地さんが待っていた。
「大地さん…!待たせたな…!!」
「遅いぞ、由子!」
そんな様な会話をしていると、
「わたしも連れてってくれよ!」
と言う声が聞こえて来た。
「え?君が…?」
見るとそこには小学生が居た。
ランドセルに校帽を被った女の子だ。
「遠足に行くんじゃないんだよ…?」
「じゃかましいわ!
わたしも"呪剣生"なんだよ!」
呪剣生と言っても、
彼女は中学呪剣生のような…。
大人の私たちについて来れるかなぁ。
「今完全にわたしを舐めてるでしょ!
人を見た目で判断するなら、
鏡見ろ!鏡!セーラー服!
本当はおばさんなのに!」
「防具屋にこれしか無かったの!」
「本当は満更でも無いくせに!」
「っ…強い…!」
彼女は
「口だけじゃなくて、
わたしは能力も強いんだから!
これからよろしくね!由子!」
「何で私の名前を…?」
「さっき名前で呼び合ってたじゃん!
由子〜!大地さん〜!って!
あんたら付き合ってるわけ?」
「なっ!違うし!」
「そうだ!神田と神楽だと、
紛らわしくなっちゃうだけだ!」
「なるほどね〜!それでも、
わたしからは逃れられないよ!
私の名前は
これからよろしく!」
名前も苗字も神が付く彼女を、
とりあえず神音と呼ぶことにした。
まだ信用は出来ないが、
この子の「言語」には力がある。
「じゃあ、再挑戦だよ!」
「がんばれ、由子!」
「神様をぶっ飛ばすよー!」
やれやれ、
神音とやらはどこまで知ってるんだ。
でももう彼女は仲間だ。
私たちは気にせず進む事にした。
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