第5話 草原フロア

私達は塔に足を踏み入れた。

すると塔から風が吹いて来る。


まるで塔の中と外が、

ひっくり返ってる様な…。


「本当にここが、塔の中…?」


地面には草原が広がっていて、

天井には青空が広がり、

太陽までもが上っている。

遠くには地平線までもが見えた。


まあ異世界だし、

そんな事もあるのだろう。


「魔物がいっぱいいるね。」


大地さんに言われて、

辺りを見渡して警戒する。


スライム、ゴブリン、オークなど、

目に入る魔物は比較的弱そうで、

経験値の足しにもならなそうだ。


「そういえば、経験値どこ行った?」


ゴブリエルと戦った後、

手に入ったのは50000円だけ。


これだけお金を貰えたのに、

経験値が低いなんて事はないだろう。


でもレベルが上がったとか

そんなアナウンスは無かった。


この世界にはそもそも

レベルという概念が無いのだろうか?


「大地さん、レベルって知ってる?」


「レベルってあれか?

 さっき脳内で◯◯に上がりました!

 って響いてたんだが、

 由子はなんか知ってるのか?」


さっきと言うのは、

ゴブリエルを倒した時だろう。


大地さんとは知らない間に、

パーティ登録してたのかも知れない。


私だけレベルが上がらないのは、

なにか理由があるのだろうか。


とりあえず大地さんに、

レベルについての説明をした。


「レベルって言うのは、

 自分の強さみたいな物だ。

 魔物を倒すと経験値が貰えて、

 それが溜まるとレベルが上がる。」


すると大地さんは理解した様で、


「それじゃあとりあえず、

 この辺の魔物を倒して行くか!」


と答えて、スライムの方に走った。


この辺の魔物は、

大地さんが殴るだけで消滅した。


これは相当レベルが上がってるな。

私・の・お・か・げ・で!


まぁ良いし?

私チート能力あるし?

因数分解が出来るから、

敵とのレベル差とか関係ないし?


大地さんがどれだけ魔物を倒しても、

私のレベルは一向に上がらない。


「まあ、そのうち分かるか。」


大地さんに、強い敵を倒すほど

レベルが上がりやすい事を伝えて、

次の階層への階段を探した。


「宝箱だ!!」


どうやらこの塔には、

宝箱が点在しているらしい。


初代呪剣生の贈り物だろうか。

魔物からの挑戦状だろうか。


宝箱から武器を見つけたりしたが、

私達には呪剣がある。


とりあえず武器をポーチにしまった。

ファンタジーなので広さは無限だ。


暫く前に歩いて行くと、

次の階層への階段があった。


階段は空の上まで続いていて、

運動不足の私には正直きつい。


でも、ここしか道はない。

私達は次の階へ登ろうと足をかける。


その時だった!


「ここから先へは行かせないよ。」


緑の蛇の髪の少女が、

私達の行く手を阻んだ。


このフロアのボスという物だろう。

明らかに他とは風格が違う。


「大地さん、この先の事を考えると、

 私は君の能力を知る必要がある。

 ここは一人で戦えるか?」


「ああ、もちろんだ。」


大地さんは敵を真っ直ぐ見つめたまま

コクリと頷いて私に答えた。

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