一一戒 偉い人

 ゴシャ――

 ゴリッ――

 立ち向かってくる衛兵を次々に殺す。俺の使千器は普段白いが、殺した人数が20を越えてくると、さすがに返り血で赤黒くなっている。

「そーいえば、あんたの使千器って防御力無いよね〜。」

 蒼猪さんは、銃の雨を会話しながら斬り進んで行った。

「あーそだな、蒼猪さんの紅剣ローズみたいな鋭さ無いし、使千の鎧ほど頑丈でも無いからなぁ。」

 俺の使千器はグローブ、名前は覇戒の手はかいのてと言う。刃物でも鎧でも無い、微妙な物だ。でも、俺が格闘で闘うからこそ、こいつが極立つきわだつ

「喋るなら手を動かせ。」

 使千が衛兵の頭を握り潰したり腕を引き千切ったりしている。

「へーへー、なら一気にお偉いさんの所まで行くよ。」

 蒼猪さんは、背の鞘を腰に持っていき紅剣を納刀する。

 フードの隙間から、蒼猪さんの赤い目が光った。

猛猪驀進もういばくしん

 蒼猪さんの立っていた地面が凹み、周りにはソニックブームが巻き起こる。蒼猪さんは周囲の物をぶった斬り、ぶち壊しながら一直線に目的の場所へ突き進んで行った。縦横無尽に破壊し、巻き込まれた衛兵は見るに堪えない形をしていく。

「おらあぁぁぁぁ!!!」

 さすが元5位の実力者、力は衰えてなかった。


 走っても追いつけなかった蒼猪さんにようやく追いつくと、蒼猪さんは既に誰かの首を掴んでいた。

「おい、ここの十二支はどいつだ。」

「うっ、ここにはいない……。」

 首を絞められている人間がじたばた抵抗していた。

「あ?んなわけねぇだろ。殺すぞ。」

 蒼猪さんはさらに力を強め、どんどん偉い人っぽい人の顔が赤くなっていく。

「ほ、本当だ…っ!今は北夕鮮に……いるんだ!」

 パッと手を離すと、偉い人っぽい人は大きく息を吸い込む。

「あー、マジ?」

「本当だ。ガハッ……、今北夕鮮で『ダット』という組織を率いて内戦に参加している。」

 呼吸が落ち着いてきたソイツは、指を鳴らす。

 ドス――ドス―――

 人間では無い足音が聞こえてくる。

「何してん――」

「おい!」

 突然部屋に入ってきた何かに、蒼猪さんは頭からぶっ飛ばされた。

 その何かは毛に覆われていて、デカくて言葉を喋らなかった。

「あー、マジか。」

 偉い人っぽい人を守るためかどうかは知らないが、蒼猪さんをぶっ飛ばした何かの正体は熊だった。

「ははっ!行けウィニーザプー!訳の分からない奴らをぶち殺せ!」

 偉い人っぽい人はその場から逃げ出し、熊が雄叫びを上げる。

 蒼猪さんは壁にめり込んでいて当分起きそうにない。

「虎閃、生き物を殺す事と人間を殺す事、どちらが難しい?」

 使千がこんな時に変な質問をしてきた。

「あー、んー、法律的に殺しやすい方は動物じゃね?」

 使千は右腕を熊に向け、左手でその腕を抑えながら右手を開く。

「分かった。灼熱波マイクロウェーブ!」

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