三十戒 鳥

「あーあー、光狼くん聞こえるかな〜?」

「聞こえてるよ。」

「支地干天乗ってるでしょ〜?なら、英政府王国に来る前に一仕事してくれない?場所は送ったからさ!」

「チッ、受けるつってねぇのに切りやがった。行くぞハティ。」

 リオンから送られてきた場所へハティと向かった。


 着いた場所は、いかにも怪しげな倉庫で、黒塗りの高級車が4台ほど停めてある。

 倉庫に近づき耳を澄ませ中のやり取りを盗み聞く。

「コレ、英政府王国の分ネ。」

「へへっ、毎度助かりやす。」

「デモ大丈夫ネ?君の国には戒盾がイルヨ?」

「戒盾様は我々のような弱小麻薬製造会社なんて知りませんよ。」

 俺は倉庫の入口をぶった斬り中へ飛び込んだ。

「誰が知らないって?」

 そこにいた20数人の犯罪者共は問答無用で銃を乱射してきた。

「いい機会だ。」

 俺は銃の雨を避けず、銃の弾丸1発1発を斬りながらそいつらに近づく。

「鍛錬の成果出てるな。」

 弾丸にかすりもせず奴らの目の前まで来た。

「や、やばい、戒盾か!何でこんな所に!」

「ゴミ処理だよ!」

 俺は1人ずつ、確実にゴミを斬り殺した。



「お前誰だ?」

 1年間の鍛錬とゴミ処理を終え政府庁に帰ると、見覚えのある腕を持つ男がいた。

使千しせんだ。無理もない、お前と最後に会った姿は腕だけだったからな。」

 使千と名乗るそいつには聞き覚えがあった。

 鳥の名を貰いながら、鳥を名乗らない風変わりな奴だった。元々は、右腕から右胸にかけて紅い鎧の一部のような物を身にまとっていた奴だったが、1年で鎧が全身を覆うようになっていた。

「お前、前はもっと人間味あったのに、どうしたんだ?」

「色々あったんだよ。」

 使千はそれ以上何も言わなかった。

「俺は会議室に向かうけど、一緒に行くか?」

「いや、俺は少し外に出る。やらなきゃいけない事があるからな。」

 使千はそう言って外に出ると、政府庁を登って行った。

 久しぶりに政府庁の中を歩いていると紀猪とすれ違った。

「光狼じゃん、鍛錬終わったの?」

「ああ、これから会議室に戻るところだ。」

「ふーん、何か嫌な感じしてるから気ぃ付けてな。」

 紀猪はよく分からない事を言って俺と反対方向に歩いていった。

 会議室に入ると、アイとエヌ、エルが居た。

「光狼ちゃん!おかえり!」

「少し離れろよアイ。」

 相変わらずベタベタしてくるアイと、それを注意するエヌ。エルは透明な板をいじっていた。

「鍛錬はどうだった?」

「ああ、すっげぇキツかった。けど1年前より10倍は強くなってる。これで十二支と存分に戦える。お前らを守れる。」

 エヌは少し笑い、アイは抱きついてきた。

 ピーッ――

 急に、どこからか指笛が聞こえる。微かにだが、しっかりと。


 30分後

「なんかうるさくない?」

 確かに先程から外が騒がしく、街の声に叫びが混じっていた。

 下へ降りる途中、複数のスーツ姿の人と会った。

「何かあったのか?」

「敵襲です!今ちょうど戒盾十三人の方々をお呼びしに行こうとしていました。」

 敵襲という事は、とうとう十二支が現れた。十二支の狙いは政府を堕とす事だとするなら、ここで全面戦争になるかもしれない。

「まずは非戦闘員の撤退、それから他の戒盾に急いで連絡、ここは俺が食い止める。」

 階段を駆け下り玄関へ走った。


「なにしてんだよ、お前。」

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