二六戒 蛇と獅子
めまいが襲う中、眠兎は戦意喪失、敵の十二支は攻撃の手を緩めない。
「牛騎!こいつら殺しちゃっていいの?」
「まぁいいけど、自分の家族もぶっ殺すのか?
「んまぁあたいは死なないし蛇亀も大丈夫だろ。」
栄蛇と呼ばれている女性は三節棍を持っている。棒の両端は赤と青の穴が空いていて、蛇亀の湾刀より毒々しい液体がチラッと見えた。
「光狼くん、あの時渡した封碧辰、返してもらおうか。」
赤丸の学生が着ていた『学ラン』に似たような格好でドスの効いた声を放つ龍が話しかけてきた。
戦闘に龍も加わり、体術すらままならない今、十二支の相手は結構しんどかった。
「光狼、あー、少し下がってろ!」
虎閃と2人で牛騎を相手にしていたが、龍が介入してきた事で1体1になる。虎閃は俺が戦えそうにないのを見て、十二支2人に1人で立ちはだかる。
「オラオラァ!」
牛騎と龍の猛攻が虎閃を襲う。斧槍を振り回し、周りを破壊しながら暴れている牛騎の攻撃は、龍には掠りもせす、その分虎閃には少しずつ切傷を刻んでる。
「ふん、お前の使千器片方貸して貰えないか?」
「お前が持ったら重くなるけどいいのか?」
「メイスはそういう武器じゃないのか?」
牛騎は斧槍を振ると、1本の獣器がメイスと手斧に別れて、地面にメイスが叩きつけられる。龍は地面にめり込んでいるメイスを拾い、恐ろしく重いはずの他人の使千器を軽そうに振る。
「さて、再開しようか。」
その時だった。獣の咆哮が聞こえた直後に、辺りが光で包まれる。
「
光の中から、独楽を縦に回転させたような動きでそいつは現れた。
「こいつか!戒盾最強の獅子は!」
リオンが来た。小さい子が憧れるヒーローのような登場で。
「政府の連中を逃してて遅れちゃった〜!テヘペロ☆虎閃、光狼、状況は?」
「あー、結構やばい。光狼がダウン中で、眠兎の腕が毛深くなってて、あっちで親子喧嘩みたいなの始まってて、蒼猪さんが手伝ってくれない。」
「だってあたし関係ないもーん。」
全然戦闘に参加していなかった蒼猪さんは、飲み物片手に、まるでショーの見物をしてるかのような態度だった。
「そっかそっか、君らの狙いは何かな?」
「血と使千器だ。」
「ふーん、なら返すよ。」
「「は?」」
リオンは予め返そうとしていたのか、十二支の物であろう複数の使千器を敵の足元へ転がす。
「分からねぇな。」
「今は戦う時じゃないし〜、何より、君達の目的は別でしょ?」
「っ!?」
十二支のヤツらが一斉にリオンを見た。
「うちにも優秀な子がいてね。そっちの鼠に言っといてよ、娘は君より役に立つってね。」
「チッ、舐めやがって。」
リオンに殴りかかろうとする牛騎を栄蛇が止める。
「やめときな。そろそろ来る。」
カランカラン
何かがこの場に投げ込まれた。直後に激しい光と爆音で周囲の判断が出来なくなる。
疲労が限界に達し意識が途切れる瞬間、最後に見た光景は、リオンが虎閃の右腕を肩から斬り落としていたところだった。
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