二五戒 獣器

「私の万符翔がバイオリンになってる!」

「それは獣器じゅうきという。2つの使千器が合わさり、1本の時よりも性能が格段に上がったものだ。本来は幻獣との契約者、つまり私達しか出来ない芸当だ。」

「なんでそんなこと俺達に教えるんだ?敵だろ?」

 確かに不思議だ。他の十二支の奴らも、自分らの情報を敵にべらべら喋りすぎだと思っていた。

「そんな情報を貴様らに教えたところで私達の強さが変わる訳では無いからな。」

 ピリリリリリリリリリ――

「私だ。ああ、そっちを出て私の国に帰ったら戒盾の小僧共が居たから遊んでいた。ふむ。何?…………分かった。私は何をすれば?そうか、了解した。」

 ピッ

「すまんな小僧共。話を続けよう。」

「ちょっと待てよ、今の誰だよ?」

「鼠勝だ。今政府を襲撃して使千器を奪っているらしい。まぁそんな事はいいだろう。」

「「いや良くねぇよ!」」

 何をバカげたことを言っているんだ?政府を襲撃?あそこには最強がいるんだぞ?

「帰るぞ今すぐに!」

 眠兎はバイオリンを持ち、蛇亀は俺を担いで死合場を出る。

「小僧共!まだ話は終わってないが良いのか!」

「んな事今はどうでもいいわ!最重要護衛対象が危険なのに呑気に敵の話聞いてられるか!」

 外に待機させておいた支地干天に乗り、俺達は大急ぎで英政府王国に向かった。

「獣器は危険なんだがな……。」


 プルルルルルルルルル――

「私だ。小僧共を引き止められなかった。何?政府に獅子以外の強い奴が?ふむ、虎か。え?あの虎二が……。そうか。それなら私が眠らそう。龍の部隊が?分かった。ならばまた赤丸へ向かえばいいんだな?了解した。」

 ピッ


 印都から大急ぎで戻ると、英政府王国の街はザワついていた。周りは、政府庁が襲撃された事を話しているようだった。

「光狼動けるか?」

「ああ、多少良くなった。それより政府庁に急ぐぞ。」

 政府庁の前には人だかりができていて、所々煙が上っていた。

 ドン―― 

「なんかヤバそうじゃない!?」

 政府庁の敷地に入り建物の中を駆け上がっていく。大きな騒ぎのある場所へ着くと、そこには複数の戒盾と十二支が居た。

「あー!光狼じゃん!」

「ちゃんとお仕事してるじゃん。」

 そこには虎閃と蒼猪さんもいた。

 襲撃してきた十二支は3人。その中には、顔を見た事がある奴も混じっていた。

「てめぇ、また出やがったな。牛騎!」

「久しぶり〜。俺の使千器返してもらいに来てもらったよ。ついでに他の使千器も回収しようと思ってね。」

 俺は叢雲を抜刀すると、虎閃が近づいてくる。

「久しぶりに暴れるか!」

「なら私がバフするよ! 提琴鎮魂歌・光ヴァイオレイクエム・ライト 」

 綺麗なバイオリンの音色が響き渡る。十二支の奴らは膝を付き、幻獣戦でのダウンが嘘のように力がみなぎってきた。

「そりゃ獣器じゃねぇか。お嬢ちゃん、やめといた方がいいぜ。」

「そこで何とでも言……!?」

 眠兎の腕が獣のように変わっていく。

「だからやめとけって。なんで獣器になってるか知らねぇけど、契約してないならそうなるわ。」

 バイオリンの音が止むと、先程の立ちくらみが襲い、十二支がダウンから回復した。

「あのな、確かに獣器は使千器以上だけどな、その分の代償もある。俺達十二支は幻獣を身に宿してるから代償無しで使えっけど、お前の場合は多分幻獣消したんだろ?『獣器』なんて言われ方してんだから何となく分かるだろ。」

 牛騎は牛丸さんが回収したはずの斧槍を持っていた。

「ならひと暴れするか。この一騎当千タイタン、お前らに止められるかな?」

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